研究紀要第6号 学習指導改善に関する研究 理科実験 - 026/036page
要がある。これには二つの方法があり,一つは偏差の割合による方法,もう一つはx2(カイ2乗)法である。
(1) 偏差と平均誤差による方法
(Nは総個体数,Pはある表現型の現れる確率q(1-p)はその表現型の現れない確率)Dとmを比較して,Dがmの3倍以内であるときは,この偏差は誤差の範囲内である。すなわち実験値は理論どおり分離をしていると判定する。
単性雑種の場合を検定してみると
表現型 工常翅 痕跡翅 計実験値 357 124 481理論比 361 120 481偏差(±) 4 4平均偏差を求めてみると
両性雑種の場合を検定してみると
以上のことから,この実験比は3:1の理論比に一致しているとみなす。
表現型 ++ +e Vg+ vge 計実験値 533 168 170 56 927理論値 521 174 174 58 927偏差(±) 12 6 4 2各平均偏差を求めると
12<15.1x3
6<11.8x3
4<11.8<3
2<7.4<3いずれの場合も,Dはmの3倍より小さいので,実験比は9:3:3:1の理論比に一致するとみなして差支えない。
2.x2による方法(chisquare test)
前法より確実で,この方法の方が最近よく用いられ,特に不連続量である場合,帰無仮説がデーターによって支持されるかどうかをみる。
このようにして求めたx2の値が,.(P>0.05)の場合は帰無仮説を捨てることができない。すなわち,仮説に反していないと考え,それは単なる誤差と見なし,((P<0.05)の場合は,仮説は捨てられ,データーは理論に反して有意の差であると判断する。この場合の帰無仮説は「実験値は理論通り3:1,9:3:3:1に分離している」と立てたものである。なお自由度は階級値の数より1を引いた値で表わす。
単性雑種の場合をこの方法で検定してみると
0.177<3.8412の値は0.05のときより小さい,すなわちP(適合確率)は0.05以上の値を示すので,理論値と一致しているとみなして差支えないことになる。
両性雑種の場合を検定してみると
この場合,自由度は4-1=3であるのでx2分布 表より照し合せると,有意水準の値が7.815であり0.643は7.815より小さいから,この実験値の差は有意の差でないことになる。
x2の分布表
◆表の濃淡は帰無仮説をすてるべきであるという程度に濃くなり,Pが0.05以下であるとき一般に仮説は捨てられる。