研究紀要第23号 幼児教育の研究 公立幼稚園における心身障害児の実態調査および人物画テストによる性格診断の考察 - 006/015page
(5) 公立幼稚園における心身障害児に対する配慮について
表5は,公立幼稚園(115園)の教師から提出されたアンケートを集計したものである。(項目は重複していることもある。)
この調査から推測できることは,公立幼稚園では,積極的に心身障害児を受入れようとしている姿勢が強いということである。遊び仲間をつくることや専門機関に相談するということが約80パーセントになっている。これは,心身障害児教育のためには,極めて望ましいということができる。
以下順を追って考察してみると,
@ 集団生活にとけこませ,遊び仲間をつくる。
遊びは,幼児の生活の中心をなすものであり,現実には遊びを知らない幼児をみかけることがある。遊びの中に心身障害児をとけこませることは容易なことではないが,この子らに子どもらしい喜びと,友と協力し合って生きる喜びを与える配慮はすばらしいことである。A 専門機関に相談する。
ここでいう専門機関とは,教育センター,児童相談所,専門医などをさしているが,心身障害児についての原因を調べて,指導の対策をたてる上からは,極めて適切な処置ということができよう。B 普通児と同じ扱いをする。
ともすると,心身障害児は,問題児としてあつかわれてしまうことが多い。行動がのろかったり,作業が不器用である場合,教師は,進んで援助することが大切である。特にすぐれた行動なり,よいことが発見されたとき,ほめてやることである。このことにより,この子らは,喜びを知ることができ,性格形成上よい結果が期待されるであろう。C 専門施設に入所させる。
現在のところ,幼児の場合には,専門施設がないのが現況である。専門施設の早急な建設が望まれるが,その間に入園を拒否したり,放置したのでは問題が残る。専門機関と相談して,いかによりよい対策を立てていくべきかを配慮すべきであろう。D 障害児の原因を知る。
心身障害児の衝動的な行動に気をとられ易く,現実の姿をただ追跡しただけでは解決とならないことが多い。出産時のこと,既往症のことなど慎重に分析してみると,身体的な病気を除いては,親の躾の不十分さに起因することが多いように思われる。このような面の追究と研究がよくなされてこそ,適切に心身障害児を援助することが可能となってくると思われる。
5.心身障害児の配慮について
項 目 アンケート数 %1.集団生活にとけこませ,遊び仲間をつくる。 45 39.12.専門機関と相談する。 35 30.43.普通児と同じ扱いをする。 13 11.34.専門施設に入所させる。 12 10.45.障害児の原因を知る。 11 9.56.個別指導をする。 5 4.37.その他 11 9.5
4 人物画テスト(H・F・D)の実際
人物画テストを利用するようになった経過を簡単に述べてみると,人物画テストを心理学的検査の一つとして,グッドイナッフが1926年に知的水準(精神年齢)を知るものとして,論文を発表してから広く用いられるようになる。
また,マッコーバー,レヴィ一らは,性格検査にも使用することを考えたが,これは,おとなや,10代の子どもを対象とした広範な研究であり,幼児についての研究が少なかったようである。
しかし,コピッツは,幼児の発達的側面と情緒的側面の両方から,人物画テストを標準化したのである。ここで,人物画テストをとりあげた理由として,人物画は,幼児がはじめにかくものであり,他の物の描出が可能な年齢になってきても,人物画は最も好んで描出される題材だからである。
このH・F・Dの実際の中では,知的水準(精神年齢)を知るものとして,グッドイナッフ法をとりあげ,発達的な面,情緒的な面および脳損傷をみるものとして,コピッツ法をとりあげた。
なお,人物画テストの研究は,このほかにも多く