研究紀要第23号 幼児教育の研究 公立幼稚園における心身障害児の実態調査および人物画テストによる性格診断の考察 - 015/015page

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22.雲,雨,雪
 ○不安のある子どもにみられる。
 ○両親の圧力を怖れている。

23.眼の欠如
 ○社会的に孤立している幼児にみられる。
 ○現実の問題を否定し,空想に逃げる傾向がある。

24.鼻の欠如
 ○心身の悩みを訴える子ども,内気な子どもに非常に多くみられる。
 ○子どもの無力感,無感動を反映する。

25.口の欠如
 ○学力の劣る子ども,心身の悩みを訴える子どもにみられる。
 ○交際をいやがるか交際能力のなさを示している。

26.胴体の欠如
 ○脳障害の子ども,学力の低い子ども,盗みをする子どもに非常に多くみられる。
 ○幼児が胴体をうまくかけなくても間題とはならない。

27.腕の欠如
 ○学力の劣る子ども,攻撃的な子ども,盗みをする子どもにみられる。
 ○不安や反社会的行為についての罪意識を反映している。

28.脚の欠如
 ○学力の劣る子どもにみられる。
 ○強い不安と危険を感じていることの反映である。

29.足の欠如
 ○内気な子どもに多くみられる。
 ○不安や無力感を示すものである。
 ○男児では9歳,女児では7歳までは問題にはならない。

30.頸部の欠如
 ○脳障害の子ども,盗みをする子どもに多くみられる。
 ○子どもの未成熟さや衝動性や内的統制の弱さと関連する。
 ○男児では10歳,女児では9歳までは情緒指標として認められない。

 

5 ま と め

 本県公立幼稚園では,知能検査や性格検査などの各種心理テストの実施が少ない実態が,まず明らかにされた。そこで,子どもの心を知るものとして,H・F・Dの見方,考え方を実例によって例述してみた。この方法を簡単であると感じたり,あるいは,難しいと感じたり,受けとり方は様々であるだろう。

現代に生きる子どもの心を知ることは極めて大切なことはいうまでもない。その意味から問題行動を事前に発見したり,問題行動の原因を追究したりする上では,H・F・Dは非常にすぐれているということができる。

 この研究が一つの指針となって,客観的な心理テストの研究が深められるならば誠に幸いである。
 子どもを指導する際,ともすると,表面的な行動に目を奪われて偏見をもつことが多いように思われる。心の内面をとらえることがより重要であり,それでこそ,子どもの真の喜びを知ることができるようになる。このような態度に徹し,子どもらの望ましい人間形成を可能な限りのばしたいものである。

参 考 文 献

 ○小嶋謙四郎代表編集者,小児の臨床心理検査法,医学書院,1973   
 ○コピッツ著(古賀行義監訳)子どもの人物画,建帛社,1971
 ○高橋雅春著,描画テスト入門,文教書院 1974


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