研究紀要27号 児童・生徒の学習能力の発達 - 003/082page
でなく,つまずきや行き詰りに際してとった自己の活動経験の有無が,子どもの学習能力の発達に大きな影響を与える原因となる。これは,これらの処置のし方にあると思うのである。
3.研究方法
この研究は,教科における学習能力の発達と授業に関する研究であるために,教科を限定して実験的に授業を通じて学習能力の形成過程を究明する。
(1) 基礎研究
学習能力の考え方については,昨年の研究を継続しているが,本年は学習能力が授業過程において深化されなければならない意義づけを再認識して,教科の特性に立ちその教科論理をふまえて,子どもが学習を通じて習得する過程および,その過程における問題点について究明した。
(2) 実験研究
研究対象を小学校の児童とした。これは,子どもの発達からみて,思考・情緒・社会性等をありのままに表現することの多い時期の子どもを対象とし,具体的思考から抽象的思考へ移行する過渡期の子どもの授業に研究の対象として特色を認めたためである。
(3) 教科・学年・内容
本年度の研究対象は,表(1)の通りである。
表(1) 授業のプロフィ-ル
教科 対象学年 内容 国語科3学年児童
(市部)●授業
読解過程における文章の要点把握の能力 社会科2学年児童
(市部)●授業
学習資料を活用する能力 算数科4学年児童
(農村部)●授業
筋道を立てて考える能力(計算を中心として)
4.授業の実施と研究の内容
各学校における指導計画の実施を原則とし,研究テーマに基づいて授業を行うが,必要によっては,調査・投げ込み教材等による授業の展開に幅をもたせた。
(1) 学習指導に関する調査から
本県内の小・中学校教師が,学習指導の改善のために特に力を入れているものは何か」を調査した結果によれば,表(2)の通りである。
表(2)学習指導の改善について〈福島県〉
とくに何に力を入れて学習指導を改善してきたか。教師が特に重要と考えているものとして,児童・生徒の自主的,意欲的追求を図ることと,意欲的に参加する学習活動をあげている。次に,重要なものとして,一人一人に学習する機会をふやすことと,発問・助言の内容方法のくふうや,学習資料の開発活用などをあげている。
これらの事項は,子どもの学習能力の発達を促進する上に実に大事なことを示唆している。しかし,現実の学習指導一般について見れば,これらの考えを裏づけるための実践過程やその方法にはなお多くの問題があるように思われる。
(2) 子どもの姿を見失わない
教師が指導したから,子どもはそれを理解したと考えるのは早計である。子どもの学習する現実の姿を把握し,その実状にそくした指導を