研究紀要27号 児童・生徒の学習能力の発達 - 004/082page
展開することが大切である。学習過程において,それぞれの子どもが,いま,どんな状態にあるかを診断することが重要であり,その実状に応じて臨機の指導を忘れてはならない。
学習能力をのばすためには,教師が教えた結果を論ずるのでなく,学習過程においてどのような問題に抵抗を感じ,どうこれに対処しているかの学習の歩みをとらえ,これにきめの細い適切な指導を施すことがその前提として重要なのである。
一方,学習指導法そのもの改善だけで問題は処理されるものではない。教科の背後にある学問体系,学問体系からくる教材の吟味,配列,これらを背景とする授業の設定という一連の流れにおいて授業のあり方をも含めて考えるべきである。従って,学習能力の研究では,子どもの伸ぴ悩んでいる能力を引き出すというストラテジーで授業の構想をたてる必要があろう。図(3)参照。
図(3) 授業の展開
(3) フィードバックのゆとりをもたせる
授業の展開過程において常にスムーズな流れだけを期待できない。子どもが学習で行き詰まりや疑問点などの生じた場合は,授業の進行を一時とどめて各自のフィードバックする時間を与えながら学習の行き詰まりに対処する手段を講じるべきであろう。図(4)
図(4) 授業の一時ストップと投げ込み教材
1.教師は,子どもの学習の「つまずき」をはやく知る。
2.教師は,その時の子どもの様子をよく見きわめる。
3.教師は,授業を途中で止めフィードバックすることを嫌うことが多い。
4.教師は,教科・指導方法に精通し,ゆとりをもって当たることが必要である。
5.学習の停滞の処理は,全単元の指導という長い眼で見れば決して不経済な指導ではない。
6.教師は,このような場合「投げ込み教材」を必要により用いることは効果的である。(4) 授業の質的改善
子どもサイドをじゅう分考えた授業をすることは,余程の周倒な準備と深い教材研究がなければ実現しないのかも知れない。しかしながら授業者は,小さな目あてを掲げながら計画的に授業を行うべきである。表(3)参照
表(3) 子どもサイドに立った授業の改善
5.課 題
今後は,授業における学習能力の形成過程をさらに究明するために従来の学習方式を生かしながら指導のたしかめに研究を移行したい。図(5)参照 もち論この評価は,フィードバックサイクルの短い時間内のたしかめや,フィードバックサイク