研究紀要27号 児童・生徒の学習能力の発達 - 013/082page
容「いままで見たことのないもの」をさしている。しかし「あれ」が指示内容のすぐ次の文の中にあるのに比べ,「それ」は,間に2つの文が入っていて指示内容とはなれているうえに,「あれ」の指示内容がわからないととらえにくいため,いっそう正答率は低くなったのであろう。
また,指示内容が長いほど,当然のことながらわかりにくく,およその指示内容はさすことができてもどこからどこまでかというはっきりした範囲がわからないことが多い。したがって,指示内容を含む文をそのまま,文末まで書いてしまったりする。
接続語の使い方では,累加の場合と逆接の場合を調べたのであるが,逆接の方の正答率がやや高かった。逆接の方が,文のちがいがはっきりしていてわかりやすいので混同が少ないのであろう。累加の方は,順接や対比選択などの接続語とのちがいがあいまいで,混同しやすいのかも知れない。
以上は前提調査からみた読解に関する学級の実態である。そのほか,素読力(すらすら読めるか)語句の意味の理解の程度なども要点をつかむ力に関係すると思われるが,前提調査には含めなかった。
語句の理解の程度についていえば,なんとなくわかっていても,正確には理解していないという傾向がみられる。したがって,似た意味をもつの語句のちがいが指摘できないことが多い。また,文脈から語句の意味を類推することもよくできない。
B 指導の観点
前提調査の結果,要点をは握させる指導の際には,次の事項に配慮していくことが大切ではないかと考えた。
ア 文,文章に関する用語の意味を十分理解させておくこと。
「文」とはどんなものかを具体的に指導し,「文章」や「段落」「語句」などとの区別を明確にとらえさせておくことである。
それと関連して,授業で使う「大事な文」「中心文」などのことばの意味するところのものもよく理解させておきたい。
「語句」(ことば),「段落」等についても同様である。イ 生活の中における使用ひん度の少ない漢字の読みや語句の意味については特に注意して指導しておくこと。
3年生ぐらいでは,ことばの読み誤りや意味のとりちがえなどにあまり注意しない。大事な語句を読み誤り,別の意味にとることもしばしばある。十分注意したい。ウ 要点をつかむ手がかりを指導しておくこと。
各段落のどの文が中心文になるかは,文章全体に通っている書き手の意図を視点にして考えなければならない。
書き手の意図を端的に表すものとして題名がある。また,くり返し出てくることばも大事なことばである。
「このように」など,前の方の文を総括するようなことばが出てくる文は中心文であることが多いことや,中心文は,段落の最初や最後にあることが多いことなどにも気を配って読むようにさせたい。
やや,テクニックにたよりすぎるきらいはあるが,初歩の段階では,要点は握の手がかりとして指導しておきたい。エ 指示語,接続語のはたらきに注意して読ませること。
指示語の指示内容が長い場合,特にわかりにくいので,ていねいな指導が必要である。
接続語では,順接,逆接,累加などの型が割合多くでてくるので,そのちがいをよくとらえさせておく必要がある。オ 一文一文の内容を確実にとらえさせること。
カ 一文一文の内容を確実にとらえさせ,それらの比較において中心文を見つけ出すよ