研究紀要27号 児童・生徒の学習能力の発達 - 023/082page

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らえ,授業展開を弾力的にしていくようにすべきであったと考えている。

4.考  察

 ひとりの子の学習へのとりくみ方をとり出し,「要点は握」の能力形成について考えていきたい。
 なお,指導過程に沿って,A子さんの活動,つまずき,能力形成についての留意点などを述べていくことにする。

(1)の段階  めあての確認

 A子は,「起立・礼」の後,教科書を出す。ほかの子は,「起立」以前に机上に出していた。A子は,用具の準備など,ほかの者より遅れるのである。
T,「本時の学習範囲をたしかめる。」
A子,指摘されたぺージを開く。何行までと説明されているのだが,はっきりとらえられない。
目をこすっている。
T,「本時のめあてを確認する。」
A子,前時に話し合って,「学習課題」としてきめたはずのことを,想起したり,話し合いの状況からとらえたりしていない。そうだ,きょうは,「記号とは,どんなものか」読みとるのだという意識化が明確になっていないようである。

(2)の段階  学習方法の明確化

T どんなところに気をつけて読みとっていけばよいか。
A子 発問の意図がよくとらえられてはいないようだ。「ウー」と首をかしげて考える。そのうち,教科書をみる。読みすすめている。
 読みの観点を質問されているのだが,よくわからないので,教科書にでも,答えが書いてあるのかと思ってみているらしい。

 教師と友だちのやりとりを断片的にきいている。ひとりの子が,「記号のことだ。」といったのをきき,「記号」ということばの部分を指であさえている。話し合いのねらいをとらえ,その流れに乗っていくことが大切なのであるが,それができない。

 教師と子どもたちのやりとりが終わる。「ことばということばに気をつけるのか。」と,誰かが言ったのをきいて,にこっと笑う。(記号とことばという題名を意識して,「記号やことば」についてどう説明してあるか読むようにと教師が言ったことからである。)

(3)の段階  中心文を予想する。

T 大事な文はどれか,読みとりましょう。わかったら,ノートに書きなさい。
A子 ノートを出す。(ほかの子は,以前に出している。)
 ここでとりあげたのは,次の部分である。

 @けれども,そのろう下のかべに図のようなはり紙がしてあったらどうでしょう。Aその人は,わたしたちが教えないでも,このはり紙を見て,やじるしのさす方へ行くでしょう。Bつまり,このやじるしは,図書室へ行くにはどう行けばいいかを表しています。
 Cこのように,物事を表すしるしを記号といいます。

 A子 ひととおり読む。口を小さく動かして読む。三分ほどの後,ノートを開く。しばらく考える。とまどっている。自信がないらしい。もう一度,教科書を読めばよいのだが,(わかるまで)それをしない。隣のB子は,ノートに中心文を書き終わるところである。
 ところで,ここで,「中心文」を,<これだ>と選び出すには,次のような手順,能力を働かせることが必要ではなかろうか。さまざまな思考,判断,推測などをしなけれぱならない。短い時間で,しかも,読みのするどさのないものには容易でないであろう。

ア、語句の読みとり
 この段落には,A子の読めない漢字はない。しかし,「ろう下」「かべ」「はり紙」「図のような」「やじるし」「図書室」「物事などの語の意味をとらえねぱならない。

イ、一文,一文の説明していることがらを読みとる。
 ● はり紙がしてあったらどうかということ。


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