研究紀要27号 児童・生徒の学習能力の発達 - 025/082page

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は,少し障害になりそうである。

エ、中心文をとらえる。
 中心文をとらえるには,直感的にとらえることと,前途のア〜ウまでのような読み方をして,どの文が大事な文か決めることがあると思われる。
 また,大事な文であると決めるものさしを持っていなければならない。筆者の説明の意図から考えて,この段落の中心文(要点)は,これだと選び出すようにすべきである。
 A子は,前提テストでは,「ようす,こうなった理由をいっているから」という観点から,中心文を選んでいる。また,

  中心文が,段落のはじめにする場合,正答
  中心文が,段落の終わりにある場合,正答
  中心文が,段落の中ほどある場合,解答なし。

となっている。「まとめの文」はどれかという問いに対して,誤答。更に事前調査でも概括している文を2問とも,解答できなかった。
 中心文をノートに書き出すという課題に対し,A子は,次のようにしている。
 この段落をひととおり読む。3分,そしてすこし考えて,ノートに書こうとする。考えている。この段落を,事前テストのとき一度,指導計画の「1」で一度,本時でと,三回読んでいる。しかし,まだ意識して文の関係を読み分け,中心文を決めることはできないようである。

 まず,「こ」とノートに書く。そして,すぐ消す。となりのB子が,どう書いたか気にしてのぞく。(B子は,国語もよくできる。おとなしいがしっかりしている。班長である。この子の通りやれば,まちがいのないことを経験から知っているらしい。) そこから,「このやじる・・」と書く。「このやじるしは,図書室へ行くにはどう行けばいいかを表しています。」と,書くつもりであったろう。

 しかし,書き終わらないうちに,次の学習(発表とたしかめ)へと進んでいっている。A子は中心文・大事な文について教師の説明を受けたり,「記号とはどんなものをいうのか」という読みの角度を与えられても,まだ,つまずいているのである。「理由をいっているから」というようなことから,中心文をとらえているのであろうか。選び出す観点をよく理解していないことのほか,つまずきの原因として次のような点が考えられる。

 ● 具体例にひかれること。
 ● 文の中での,ことばのかかり受けをとらえ,ことがらを概括することがよくできない。
 ● 文と文との関係がとらえられない。
 ● 中心文とは,どんな条件を備えているのか,よく理解されていない。

 これらは,注意深く読む態度や,分析的に読む能力が基礎になるのであろう。

(4)の段階  第1段落の読みとり

 他の子が指名されて読んでいる。A子も教科書を立てて,いっしょに読む。
 前の席のすこし落書きのないD男が,消しゴムをおとす。それが,A子の机の下にころがってくる。A子は,そのことが気になって,下の方を見ていて,話し合いに参加しない。D男が,「とってくいよ。とってくいよ。」と,さいそくする。A子しかたなくとってやる。こんなことで,第1段落のことがらの読み深めをしないでしまう。学習の流れに乗らないで終わる。

(5)の段階  第2段落の読みとり

 「ここでは,どんなことが書いてあるでしょう。」
ときかれる。あらためて,教科書を読む。他の子らは,口々に答えたり,それに対しての意見を述べたりしている。A子は,話し合いに参加しない。
 「その人とは」という教師の問いに反応して,教科書の文を指でおさえる。ここ,ここと,小さい声で言っている。しかし,挙手はしない。(自信がないのだろうか)となりのB子のことを気にしたり,前の子のちょっとした動きに心が向いている。
 「はり紙のやじるし」が,ことばて教えると同じような結果をもたらすことを,しっかりと読みとることはできなかったであろう。

(6)の段階  第3段落と,第1・第2段落との関係


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