研究紀要27号 児童・生徒の学習能力の発達 - 026/082page
を読みとる。
「第3段落を短くまとめると,どうなるかな。」
とさかれ,頭をかく。「なんといったら,いいかな。」と,つぷやく。となりのB子のノートをのぞく。友だちの発言を聞いている。「1段落と2段落の例をいっている…。」という発言に,大きくうなずく。3年生では,段落相互の関係を明確にとらえることはむずかしいことである。A子は,うなずいてはいるが,1・2段落の内容をよく理解した上でのものかどうかはっきりしない。どちらかといえば,ことがらのたしかめ不充分といったほうがよい状態であろう。これは,前提テストやこれまでのA子の学習へのとりくみから言えるだろう。
同じように「理解」したように見える場合でも,その理解のしかたや,深さや,理解のスピード,確かさなど,みんな異っているのであろう。
(7)の段階 学習のまとめ
A子は,そろそろあきてきたようである。小さなあくびをかみ殺して,教科書をとりあげ,友だちの音読をきく。
「第1〜3段落までから,大事だと思うことばをノートに書き出すように指示される。隣のB子は,すぐノートに<第1段落から第3段落までのうちの大事なことば>と書き,教科書を読みはじめる。それを見て,B子も,ノートに,<第1段……>と書く。うまく書けず,消す。また書こうとする。とうとう,書き終わらない。大事なことばを読みとる学習をせずにこの時間終わってしまう。以上,(1)〜(7)まで,A子の学習へのとり組みをたどってみて,次のような問題点を指摘できよう。
@ 学習の各段階のはじめにつまづく傾向のあること。
(1)の,用具の準備の遅いこと。はじめの教師の説明をよくききとらないこと。
(2)の,読みの観点をとらえるのもあいまいである。
(3)の,「大事な文」についての理解が不充分のまま,読み出していること。
めあてにむかって的確に進むというより,まわり道をしている点が問題になろう。A 知的面・理解面とともに,情意的な面の問題が見られる。
@ ほかの子のことを気にすること。隣席の成績がすぐれている子と同じようにすればよいと考えていること。自分の力で読みとって,ノートするようなことが少ない。自分に合った学習のしかたがあることを教えたい。B 集中性がたりない
目前の学習すべきことやねらいから離れたり,気を抜くことがあり,その部分の理解を困難にしている。学習中のごく細かなできごとがさまざまな影響を与えていることに注目したい。
5.おわりに
(1) 中心文をとらえること
3年生では,段落の要点をとらえることが主である。要点をとらえる手がかりとして,中心文に着目して実践をしてみた。
中心文をとらえる前提としての,ことば,文の読み,文と文との関係の読みを大切にしてきた。一方,説明されていることがらの読みとりも,知識を広めるために大事なことであるし,ことがらとことがらの関係をぎんみして,要点をおさえることが基本であると考えて授業を展開した。
結論を述べている文や,概括している文をとらえることは,その段落の要点をとらえることと同じことである場合が多い。しかし,中心文に余分なものが含まれている時は,それをけずって重要な点を残すようにすることもすこし指導した。これは,4年生での主なる目標である「要約すること」への橋わたしの意味もあるからである。
段落の中心文がはっきりとはでていない場合の要点のとらえ方は,むずかしい。その場合は,