研究紀要27号 児童・生徒の学習能力の発達 - 080/082page
(2) 見学学習をめぐって
見学するためには,その見学したい意図や二ーズがあって行われることが多い。「なぜ,郵便局を見学したいか」ということを調査するのも一法でなかったかとも思われる。見学したい気持は児童の個人差があることは言うまでもないが,担任としては,郵便物が確実に届くための仕事の順序を具体的に見ようとしたものである。具体的な現実に眼を向けようとしたことは結構なことである。
しかしながら,何を,どう見学させるかということは,学年の発達段階からみて留意すべきことだろう。それは,一つの場面だけ見ても可なり規模が大きいために,他の場面や仕事との関連がつかなくなってくる傾向が多いからである。この学習においては,学年全体で郵便局(本局)を見学したのである。
子どもは,郵便ポストを見物している。しかしながらこの郵便局は,広い地域に点在するポストから郵便物が集配人によって集められる現実を一つとらえても,集配人の仕事の量や範囲は可なり広く関連をもつものである。これらを筋道立てて指導することが大切であるが,このような事例をとりあげても子どもの思考はさまざまに展開するものである。したがってこの過程における子どもの学習能力の形成を考慮しながら指導されなければならないだろう。
(3) 仕事の分業への開眼
現場学習でおちいり易い欠陥は,見学はしたものの統一的整理がつかない点である。教室学習に終始している習慣から脱しきれないで,現場学習に入れば周囲の環境に眼を奪われて派生的な事象に深い興味を示すことが多いのである。この場合,教師は本筋にそれた発言として切り捨てがちであるけれども子どもの発見的,または興味深い意見は一応聞いてやることが学習能力の発達に極めて大切な配慮なのである。
仕事の内容を巨視的にみることは重要なことである。すなわち,ここでは何をするといったブロック的な見方を養わせることである。これが,分業的な開眼である。郵便が,集められて相手に届くまで大きく分けてどんな仕事を経由するのかをは握させれば,その内部における仕事の分担も関連的に理解することになるだろう。
5.まとめ
(1) 資料活用能力を育てる
授業の中ではさまざまな資料をさまざまな方式で提示する。しかしながら,これは統一性を伴った提示であり。授業の目標を達成させる過程,つまり子どもたちが学習目標に向かって思考や認識を深めるため学習過程に応じて適宜行われるものである。
このように,目標達成に必要な資料は子どもの判断や思考を具体的に成立させるものである。したがって資料は,子どもたちが学習目標を達成していく過程に即して的確に提示されなければならない。
@ 2年生における資料活用能力育成の方向能力育成の指導の方向を次のように考える。
○ 児童の生活経験を多くとりあげたり,現場学習を可能な限り実施する。
○ 疑問を持たせ,それから直接,間接経験させ事物,事象を正しくとらえることによって知識を習得させる。
○ 学習活動をくふうし,児童が興味,関心をもって学習できるようにする。
○ 具体的に発言している児童をたいせつに評価し,自分なりの考えにもとづく発言を重くとりあげる。実際の授業面
○ 児童が進んで発表できるように児童の経験や考え方に対応した発問のくふうをする。