研究紀要第29号 学習指導に関する研究 - 063/118page
ことはあまり知っていないと考えられる。「おにいさん」といっているので,20才前,15才よりは,上と思われる。
◇ つぎの ぶんしょうを よみ あとのといに こたえなさい。(会話かち気持ちをよみとる)
かっぱ (東書 2年上より)
とうきょうから おきゃくに きている おにいさんの ところへ こうちゃんが はしって きました。こうちゃんは,ざると バケツを もって いました。
「おにいちゃん,一本ばしへ 行かない。」「何か 魚が とれるのかい。」
「うん,どじょっこに えびっこ,それに かっぱ」
「えっ,かっぱ」
おにいさんは,こうちゃんの うしろに ついて,むぎの ほなみの ゆれる こみちを いそぎました。(1) 「何か 魚が とれるのかい。」と いったのは だれですか。
(2) 「うん,どじょっこに えびっこ それにかっぱ」 と いったのは だれですか。
(3) 「えっ,かっぱ」 と いった ひとは,どんな きもちだったのでしょう。
(4) <むぎの ほなみの ゆれる こみちを,いそぎました。>と かいて ありますが,このとき,ふたりは,どんなことをかんがえて いたと おもいますか。
・ おにいさんは
・ こうちゃんは誰のどんなことばに対してのものであるか読みとること。
○ こうちゃんに対して発したことばである。
○ そのこうちゃんは,おにいさんのところへ,走ってきたのである。急いでいるのである。「ざる」と「バケツ」をもっている。おにいさんは「ざる」は,魚をすくうためのもの,「バケツ」は,すくった魚などを入れるものであることを,見抜いたに違いない。
○ こうちゃんは,気負って,「おにいちゃん,一本ばしへ,行かない。」という。これは,「いきましょう。」のさそいである。「いこうよ。」の意である。「一本ばしへ,行かない?」となっていればよいのだが,「行きません。」と,打消しに読みとったのではいけない。
○ 「何か魚が,とれるのかい。」 そんな,ざるや,バケツを持って? 「一本ばし」は,橋のかかっている川をさしている。橋のまわりの場所をいっているわけである。そこは,かっこうの,どじょうすくいの場所であり,幾度かそこでどじょうや,えびなどをすくっている。こうちゃんは,きょうもたぷんとれることを知っている。「何か〜。」の文には,おにいさんが,こうちゃんをからかっているようすもでている。
○ これに対し,こうちゃんは,すなおなものである。「うん (とれるよ)どじょうもとれるし,えびもとれるし,それにかっぱもとれるんだよ。」と答えている。こうちゃんにとって,「かっぱ」は,どじょうや,えびと同じレベルのものとしてとらえられている。
○ だが,にいさんの描いた「かっぱ」は,こうちゃんのそれとは同じものではない。こうちゃんのかっぱは,「たがめ」であり,にいさんのかっぱは,「河童」である。このくいちがいを児童達は読みとらねばならない。
以上のことをふまえて,「えっ,かっぱ。」を解釈しなければ,気持ちの読みは充分とは言えない。だから,「ざる」とか,「河童」についての知識も大切である。
河童について 知っているもの14名。知らないもの36名。 ・ざるについて 知っているもの32名 知らないもの10名。これからみると,気持の想像に思い違いなどでてくることが当然考えられる。○ おにいさんは,「かっぱ」ときいて,一瞬,えっと驚く。ほんもののかっぱであるわけはないがと思う。何しろ,ざるですくうことのできるものなのだから。それで,興味を呼び起こされ,たしかめてみたいと思い,こうちゃんのあとをついていくのである。