研究紀要第29号 学習指導に関する研究 - 079/118page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

4 おしょうさんへの 手紙
  「感想文」についての考察

 感想を書かせる場合,どのような角度から切り込ませるかが大事である。書きたくてしかたがない。書くことが,脳裡に満ちている。おおまかな構想も持っているというような子には,直ぐ書かせればよい。そのような子が多い程,望ましいわけである。
 しかし,そうでない場合は,このようなことで書くようにと,指示することになる。例えば・おしょうさんに聞きたいことがあったら,書いてみよう。

・この童話のこの場面について,こんなことを考えたということを書いてみよう。
・こんなことがわかったとか,こんなことは不思議だったということを,書いてみなさい・主人公のこんな点は好きで,こんな点はきらいだと書いてみよう。
・ここはおもしろかったとか,わたしも似たようなことがあったと書いてみよう。

というように。このことで子どもの文章は大きく左右されるようである。
さて,「みかんの木の寺」をどのように読んだか,「おしょうさんへの手紙」の形で書いたものについて,考察を加えてみる。

1          【4】男子

 ぼくはおしょうさんのほうが,まちがっていたとおもいました。でも ようくかんがえると おしょうさんのほうが ただしかったでした。
ぼくも こどもみたいなことをしたときもありました。そして やはりおこられました。
そして そのばにまたきました。そして おこられたから あきらめました。

 「だまって,ものをとる」「ぬすみ」ということをとり出して感想をのべている。「ぼくもしたことがある」「やはりおこられた」と,体験をもとに読んでいるのである。いちろうが手をのばす場面を特に心を動かして読んだのであろう。

2          【3】男子

 おしょうさん なぜあんなうそをついたの。おしょうさん うそをつくと おにのはじまりだよ。ぽくは おしょうさんを わるい人だと思もいました。
 おしょうさん なんで さいしょには うでまくりをしてたっていたのに さいごにはなぜやさしくしたの。そういうにするんだったらはじめから やさしくしてあげればいいのに。

 「うそをついた」というのは,何をさしているのであろうか。「あと,四・五日だ。」といって,更に「あと一日だ。」と札を下げたことを述べているのであろうか。
 はじめおこっていたのに,最後にやさしくしたのはなぜかということは,多くの子が気にしていることである。

4          【16】男子

 おしょうさん お元気ですか。ぼくは 元気です。さいしょのころは,こわいおしょうさんと思っていたら おわりの方になって 親切になりましたね。
 おしょうさんは,みかんの木にふだをかけたりして考えましたね。
 ぼくも おしょうさんの家へ行って みかんをもらいたいなあと思いました。

 はじめ,「こらっ。」といった時以外,出てこないおしょうさんをおかしいなあと,思っている子である。わざとそうしていたと解釈するかどうかで,おしょうさんは,どういう人かということは変わってくる。かくれて見ていたのだろうか。


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は福島県教育センターに帰属します。
福島県教育センターの許諾を受けて福島県教育委員会が加工・掲載しています。