研究紀要第29号 学習指導に関する研究 - 098/118page

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間までは泡延距離もゆるやかな上昇を示しているが,20時間で40.3oと急に上昇する。15時間までは色も淡黄色で新鮮油とあまり変らないが,20時間では淡褐色となる。粘度も増し,臭いも悪くなってきた。この後は細かい泡の広がりが急激に増し,泡延距離が写真2のように大きくなってくる。泡延距離,色,臭い,粘りなどから総合的にみて,泡延距離32oが使用限界とみてよいと思う。
(なお,加熱は1日につき,5時間を限度として実験した)

図5.新鮮油と酸敗油の泡延距離の比較
図5

 図5は新鮮油と酸敗油の泡延距離を比較したものである。新鮮油は図4の0時間と同じである。酸敗油として,(1)の揚げ油の温度変化実験に使用した油を室温で6ヵ月放置しておいたものを使用した。泡延距離はあじの方が37.3o,じゃがいもの方が35.8加と高い値を示している。酸敗油の毒性については,多くの研究がなされている。調理上これらの油脂の変化をできるだけさける注意としては,まず加熱時間を少なくすることである。作業手順を立てさせるが,揚げ物学習においても油鍋を火にかける時間を考えさせる。加熱したり,さましたりを繰り返えすと油が早く酸化するから,材料の準備ができないうちに油を加熱しないようにさせたい。

 泡延距離測定による劣化判定の方法は,特別の試験機器も必要なく,時間的にも判定できる方法で簡単である。特に実験として時間をとらなくても,揚げ物実習前に示範してみせる程度でも理解させられるものである。生徒も家庭での油の劣化判定に簡単に取り入れられるものと思う。

(3) 揚げ油の使用後の取り扱いと酸敗の関係

(ア) 保存場所による過酸化物価の変化
 油脂の酸敗の前段階として生成される過酸化物価は,ヨウ化カリを酸化してヨウ素を遊離させる。このヨウ素をチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定して,材料1sに対するミリグラム当量であらわす。したがってチオ硫酸ナトリウムの消費量が大きいほど,酸化状態が進んだものである。

 1) 試 料
  @ 新鮮油 (大豆油)
  A じゃがいもを揚げた油
  (1)の揚げ油の温度変化実験後の油を室内と冷蔵庫に保存したもの
  B あじを揚げた油
 (1)の揚げ油の温度変化実験後の油を室内と冷蔵庫に保存したもの

 2) 過酸化物価の測定方法
  @ 5c.c.角フラスコに10gの試料を秤取する。
  A 氷酷酸とクロロホルムの混合液
   (3:2)50c.c.とKI飽和液1c.c.を各フラスコに加え,15〜20秒間すみやかに振り,正確に1分間静置する。
  B 次に蒸留水100c.c.を加え激しく振る。
    これに数滴のでん粉溶液1c.c.を各フラスコに加え,青色となったものをN/10Na2S2O3液で無色になるまで滴定する。

計算式

計算式

  Mは過酸化物価
  NはNa2S203の規定数
  TはNa2S203のc.c.数
  Wは試料油脂のg数


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