研究紀要第29号 学習指導に関する研究 - 100/118page

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ろ,じゃがいもを揚げた油では,加熱時間1時間で不味になることを危険率5%で有意差を認め,その時のTBA値は0.22となったと報告している。(昭和47年度学会受賞記念論文「揚げ物に関する研究」)
 TBA値0.2を油の使用限界とみると,今回の油の状態では,冷蔵庫保存では約2ヵ月半ということになる。家庭では,使用後の油は冷蔵し,妙め物などに用いて長い日数保存しないようにしたい。学校で揚げ物学習をした場合,学級数によっては,かなりの量が残るから,その後の使用,保存法をよくし,適切な資料が与えられるようにしたい。

4.小麦粉の調理性

 中学校の揚げ物はてんぷらを扱っているので,衣材料としての小麦粉の調理性を中心に検討を加えた。
 てんぷらの衣は揚げ種を包んで,種からの脱水を防ぎ,衣そのものは脱水されると同時に揚げ油を吸収して揚げ種に油脂味を加え,天ぷら独特の香味と口ざわりを作り出すものである。衣のできばえは,小麦粉の質,稀釈液の組成や量,操作に関係が深いので,これらに関連する実験を取りあげた。

(1) 小麦粉の種類とグルテンの採取量

 小麦粉は水に不溶のたんぱく質量によってグルテンの摂取量の異なることを確め,用途に適する小麦粉を選ばせる際の資料とする。

1) 試料  薄力粉,強力粉
2) 用具  一般調理器具
3)方法
 @ 薄力粉50gに水25c.c.加えざっとこね,両手で引っ張って伸びの状態をみる。
 A @のドウを60回こねて,両手で引っ張って伸びの状態をみる。
 B Aのドウをまるめてぬれぶきんをかけて,30分ねかした後,両手で引っ張って伸びの状態をみる。これをまるめて水につける。
 C 洗いおけに水を入れてこの中でBのドウをまとめるようにこねては水をかけながら,白い水が出なくなるまで洗い出す。手に残ったガム状のものの水分をとり目方を測る。これが湿麩量である。これを2倍すると100g中の湿麩量を%で示すことができる。
 D 薄力粉のドウを30分ねかせている間に強力粉についても同様に実験する。
 E 薄力粉と強力粉から採れた湿麩を180℃に加熱した天火に入れ30分焼き膨化状態を比較する。取り出して5分放置してグルテンの目方を測る。
4) 実験結果と考察

写真3 小麦粉の種類とグルテン量
写真3

 小麦粉のたんぱく質は,吸水するとグルテンを形成する。グルテン形成に参加した水は脱水しにくいから,てんぷらの衣に用いた場合は,油との交代が悪く,からりと揚がらず成績が悪い。
 写真3に見られるように本実験では,薄力粉には生のグルテン量で26%,それを天火で焼いて8%のグルテン量が測定された。
 強力粉の方は生のグルテン量で42%,焼いて14%のグルテン量であった。
 てんぷらの衣がからりとしていることは水分が少なく,油の多い状態であるから,これに用いる小麦粉はグルテンの少ない薄力粉が適している。


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