研究紀要第29号 学習指導に関する研究 - 101/118page
(2) 衣に用いる水の温度と流下時間および離水量との関係
てんぷらの衣を作る場合,溶き水の温度差によってどのようにグルテン形成の速度が異なるか,また離水量はどうか比較してみた。
1) 試料 薄力粉,中力粉,強力粉
2) 用具 ロート,ロート台,シリンダービーカー,遠心分離機,遠沈管ストップウォッチ,恒温器
3) 方 法
@ 薄力粉10gに30℃の微温湯17c.c.を加えざっとまぜて30℃で30分保つ。
A 薄力粉10gに15℃の水17c.c.加え,ざっとまぜて室温に30分保つ。
B 薄力粉10gに2℃の冷水を17c.c.加え,冷蔵庫に30分保つ。
C @,A,Bをそれぞれロートに入れ,流下する時間をはかる。
D 薄力粉5gを3つはかり,a,b,cとする。遠沈管にa,b,cを入れる。
aには2℃の水8.5c.c.
bには15℃の水8.5c.c.
cには30℃の水8.5c.c.
を加え箸で10回かくはんし,3000回/分で10分間遠沈して,上澄み量をはかる。
E 薄力粉,中力粉,強力粉をそれぞれ5gずつはかり,遠沈管に入れる。
15℃の水8.5c.c.それぞれに入れ箸で10回かくはんし,3000回/分で10分遠沈して上澄み量をはかる。
4) 実験結果と考察
てんぷらの衣に用いる小麦粉はグルテン量の少ない薄力粉が適しているが,これを用いて衣を作る場合,水の温度によってグルテン形成の速度が異なってくる。
図8は,水の温度とかえて衣を作り,その粘りの具合をロートを流下する時間で比較したものである。水温2℃のものはかくはん時の手ごたえもさらさらしており,流下状態もぽつぽつ切れておちてくる。
30℃のものはかくはん時よりも更に粘りがでた状態で,ロート先からつながってゆっくり流下してくる。流下時間は図8でみられるように水温が高くなるほど粘りがでて時間が多くかかっている。2℃のものは1分51秒で30℃の4分22秒にくらべて短時間である。水温15℃でも30℃の水よりもグルテン形成がおそい。
夏にてんぷらの衣をつくる場合は,冷蔵庫に入れた水を使うとグルテン形成がおそく成績がよい。
図8の斜線のグラフは水温の異なる溶き水を用いて衣をつくった場合の離水量をみたものであるが,温度の低いほど離水量が多くなっている。