研究紀要第29号 学習指導に関する研究 - 102/118page

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 写真4は小麦粉の種類をかえて離水量をみたものであるが,グルテン量の少ない粉ほど離水量が多くなっている。グルテン形成に使われる水分が脱水されにくいことから衣としては,薄力粉を用い,水温の低い15℃以下のもので衣をつくり,時間をおかずにすぐ用いられるよう作業手順を考慮する必要がある。

(3) 揚げ物における脱水

 てんぷらの衣について,小麦粉を溶くときの溶き水の違いや,かくはん回数の違いによる衣の状態を観察し,よい衣の作り方や衣の役割について理解させるための指導資料として検討してみたものである。
1) 試料  薄力粉,卵,重曹,揚げ油
2) 用具  揚げ鍋,箸,はかり,温度計 シリンダー
3)方法
 @ 薄力粉をふるいにかけ,20gずつ4個用意する。
 A 油を600c.c.鍋に入れ180℃にしておく
 B 卵1ヶをとき,水100c.c.を加え,卵水を作る。
 C 薄力粉20gの1.5倍(30c.c.)の卵水に薄力粉を加え,箸4〜5本でざっとかきまぜる。(かくはん回数を数える)
   180℃の油でからりとするまで揚げ,ろ紙を敷いたバットに網じゃくしで揚げる………a
 D 薄力粉20gの1.75倍(35c.c.)の卵水に薄力粉を加え,4〜5本の箸でざっとかきまぜ,半分を180℃の油でからりとなるまで揚げる。………b1
  残りの半分を更に20回かくはんしてbl同様に揚げる。………b2
 E 薄力粉20gの1.75倍の水に0.04gの重曹を加え,これに薄力粉を加え,ざっとかきまぜ180℃でからりとなるまで揚げる。………c
 F 薄力粉20gの2倍の卵水に薄力粉を加え,ざっとかきまぜ,180℃でからりとなるまで揚げる。………d
 G 揚げたら重量,水分量を測定する。
  水分量は赤外線水分計を用いて測定を行なった。
4) 実験結果と考察

図9.衣の溶き水の違いによる衣の重量と水分量の比較
図9

写真5.衣の溶き水の違いと衣の状態
写真5

 てんぷらのおいしさは,種のおいしいことが第一であるが,同時に衣の香りと衣のさくさくした口ざわりによるところが大きい。衣の水分は,油の中で加熱している間に水蒸気となって蒸発し,これが油の中で泡となるので,水分が少なくなると泡も少なくなる。水分の出た後に,油が吸収されもろいからりとした口触りを作り出す。


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