研究紀要第29号 学習指導に関する研究 - 103/118page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

 図9は,衣の溶き水の割合を変えて衣を揚げ,その重量と水分量を測定したものである。a,b,cの順で重量が多くなっているが,水分量はその逆になっている。
 天ぷらの衣としての評価をしながら,このような現象となるのはなぜか説明していくことにしたい。

a 粉に対して1.5倍の卵水で水分が少ないので,まぜる時にグルテンがでやすく,脱水しにくい状態で,でき上りの衣も少し固い感じである。さつまいものようなでんぷん質で糊化に時間のかかるような材料およびかき揚げのような材料と材料をつなぐ場合の衣に適する。

b1 写真5の左側のb1は粉に対して1.75倍の卵水でからりとしていて,しかもふんわりと軟らかく,色もきれいにできておいしい。

b2 b1と同じ材料であるが,かくはん回数がblにくらべて20回多い。粘りがでて衣はつのがでたような形になり,もったりと重い感じである。

c 写真5の右側のcは,重曹を用いているので非常に脱水が多く,乾いていて軽いが硬すぎる感じである。これは,重曹が水にとけて加熱されCO2として出ていく時に衣をひろげるので一緒に水分も出やすいためである。

d 粉に対して2倍の卵水で作った衣であるが,bにくらべて薄いがきれいな樹氷のような衣であり,えびなどの中の材料のきれいな色合をみせるものには好適である。

5.食品の扱いに関する実験

いか肉の場合

(1) いか肉の組織

パラフィン包埋法,アザン染色によってプレパラードを作成したものを用いて,揚げ物材料としていかを用いる場合の扱い方について検討を行なった。

1) プレパラードの作成
 @ 試料の作成
  試料は3×5×5oの大きさにし,皮つきのもの,皮をむいたもの,体軸に対して縦と横の繊維について作成した。
 A 固定・水洗い・脱水
  10%ホルマリン緩衡液で1日固定し,水洗いする。アルコールで脱水する。
 B 透 徹
  キシロールで組織を透化させる。
 C パラフィン浸透・包埋
  キシロールパラフィン,軟パラフィン硬パラフィンの順に浸透させ,シャーレを用いて包埋する。包埋した組織の形をととのえ,台木に張りつける。
 D 切片製作
  ミクロトームにより10ミクロンの切片を作る。スライドグラスに薄く卵白グリセリンをぬり,蒸留水を1滴おとし,その上に切片をのせる。切片を張ったスライドグラスを伸展器の上で伸展し,続いて乾燥する。
 E 染色)アザン染色の場合)
 ・ キシロール及ぴアルコールを用いて脱パラフィンし,後流水で水洗いする・ アゾカーミン液を60℃にし,30〜60分染色する。
 ・ そのまま室温になるまで放置し,過剰の色素をかるく洗う。
 ・ 5%燐酸タングステン酸水溶液に30分以上つける。
 ・ アニリン青,オレンジG混合液で15〜30分染色し,蒸留水で手早く洗う。
 ・ 95%アルコールで分別,脱水,透徹封入する。
 ・ ラベルをはって乾燥整理をし保存する。


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は福島県教育センターに帰属します。
福島県教育センターの許諾を受けて福島県教育委員会が加工・掲載しています。