研究紀要第31号 児童・生徒の学習能力の発達と授業に関する研究 - 001/043page
文章構成能力の育成と授業に関する研究
−事柄ごとにまとめて書く力をのばす指導−
1 研究のねらい
この研究では文章表現(手紙を書く)において児童は,どのようにして段落を立てようとするかどんな点に困難を感じたりつまずいたりするのか明らかにしたい。また構成段階の評価のあり方もさぐっていきたい。これらを通して,文章構成力をのばすための手だてを考えて,表現指導の改善をはかろうとするものである。
(1) 文章構成指導の重視
各学年の指導の重点は次のようになっている。
学年 重点目標 1身近な事柄について簡単な文章を書く(したことの順序をたどって) 2事柄の順序をはっきりさせて書く(できごとの順序をたどって) 3事柄ごとにまとまりのある簡単な構成の文章を書く 4段落ごとの構成,段落相互の関係を考えて書く 5全体の構成を考えて書く 6目的や内容にふさわしい文章を書く(効果的な表現のくふう)
これを見ると,各学年とも,文章構成指導を中心に系統化されていることがわかる。
(2) 構成段階を取り上げる理由
作文力をのばすには,周到な計画のもとに表現の各過程において,きめこまかな指導が必要である。この研究で主として構成段階を対象としたのは,つぎのような理由による。
@ 子どもたちの「事柄ごとまとめて構成する力」が,下の表を見ても伸びなやんでいることがわかる。
表1
A B C事柄ごとのまとまり 6人 15人 21人文題と内容の一致 8人 20人 14人観
点A・まとまっている ・一致している (6月調べ 生活文) B・部分的にまとまっている ・すこしはずれている C・ほととんどまとまりなし ・かなりはずれている
A文章構成の段階は特に大事にすべきであると考える。
・ 取材と記述とを結ぶ核となっている。
書きたいこと,取材したこと,これを明確にし,整理してどんな順序で,どこを中心に書き進めていくか、「想をねり,まとめる」ことが,文章全体のまとまり,主題の統一につながる。また,記述活動を円滑にもする。
・ 評価の機能が生かされる。
表現の各過程での評価が十分なされなければならないが,この段階後になると,フィードバックがむずかしくなる。この段階で構成メモをつくやせてみると,取材とおよその記述内容が容易には握でき効果的な指導ができる。
(3) 研究上の留意点
@ 授業を中心に研究する
授業のねらいがどのように実現されていくのかとらえる。また,授業過程における評価はどのように行われるべきか考える。
A 教科書の作文教材の扱い方を工夫する。
B 教師の意図と子どもの動きとのズレに気をつけ,その要因をさぐる。
C 作文の評価のあり方について考える。
2 対象
小学校3年生,福島市内の中心部にある学校。
明かるいふんい気の学級である。
3 指導の実際
(1) 単元名 書くことがらをととのえて書こう−手紙を書こう−
(2) 目標
@ 手紙における大事なことが分かり,書くことを整理して相手によく分かるように書くことができるようにする。
A 文章の構成を考えて書くことができるようにする。
B 手紙を通して,書くことが生活化できるようにする。
C 漢字の読み方と送り仮名の意味が理解できるようにする。