研究紀要第31号 児童・生徒の学習能力の発達と授業に関する研究 - 002/043page
(3) 概観
@ 教材観
ア 3年生もこの時期になると,生活経験が広くなり,書く材料も豊富になってくる。しかし,それらの経験を取捨選択したり,構成したりすることは十分でなく,羅列的な文章になったり,全体としてまとまりのない,だらだらした文章になる傾向が出てくる。そこで,この教材を通して,書こうとする事柄をある程度はっきりさせ,文章をまとめる際に必要な材料を整えたり,構成したりする能力を育てるようにしたい。
イ 文章をまとめる際に必要な,用件を整えたり構成する力をつけるのに,手紙は最適な教材である。書き手には,相手に知らせたい事柄と必要感があり,読み手によく分かるように書かなければならない必要性も具体的に理解できるからである。身近に相手が意識されることによって,児童の書こうとする意欲が喚起されるという利点もある。
ウ 手紙文の書き方を理解するということだけでなく,児童自身が実際に書くという活動を第一に考え,そのことを通して書こうとする意欲を高めたり,整えて書くことの意義を感得させたり,段落意識をつけさせたりしたい。したがって,書き上げた手紙を投かんし,返事のひろうをするまでを学習として組織したい。
A 児童観
事前の調査
構成に関係ある能力について次のねらいのもとに調査した。
○ 授業計画の作成に役立てる。
○ 事柄ごとにまとめ書く力の実態をとらえ,授業後のそれと比較し分析する。
ア 調査対象小学校3年児童40名
イ 作文を書く時の困難点
表現過程のどこに困難を感じているか調査してみた。5つの段階のうち,2つ選んでよいことにした。結果をまとめると,表2のようになっている。
表2 困難だと感じるところ
段 階 人 数 取 材 23人 構 成 25人 記 述 1人 推 考 7人 発 表 26人
「発表」することについで「構成」「取材」を苦手とする子の数が目立つ。
次に,構成段階のどんな点に困難だと感じているか調査してみた。その結果は表3の通りである。
表3 構成段階の困難点
項 目 人 数 順序を考える 4人 どこからどこまで書くか 7人 だんらくを考える 3人 メモをつくること 7人 中心のきめ方 20人
これを見ると,「中心のきめ方」むずかしいとする子の多いのが目立つ。これは,生活文の場合を思い出して,選んだものと思われる。順序は,したことの順でよいとし,段落はあまり意識してないのではなかろうか。
ウ 事柄ごとにまとめて書く力(作文調査)
「文題と内容の一致」とともに1ページにまとめておく。これは生活文で調べたもの。(表1)
エ その他6月下旬に書いた生活文から,次のような実態をとらえた。
○ 字数 最高2,460字 最低340字 平均981字
○ 文数 最高79文 最低12文 平均30文
オ 手紙を書いたりした経験(9月調査)
書いたことがある。男子7人 女子9人
もらったことがある 男子6人 女子7人
カ このほか,子どもたちが最初に書いた手紙文からつぎのことについて調査した。
・ いくつの事柄を述べているか
・ 相手にたずねている事柄の数
・ 段落ごとのまとまりはどうか
・ 書式はどうか
・ 書き出しの文と,結びの文はどうなっているか
・ 常体で書いているか,敬体で書いているか
・ 表記について(誤り)
・ 読み手との思い出
これと同じ項目を学習後に書いた手紙文でも調べ,両方の結果を比較して学習の効果をとらえようと考えたのである。