研究紀要第31号 児童・生徒の学習能力の発達と授業に関する研究 - 021/043page
いるようである。
ク 表記
これも特に気をつけるように強調してはいない。
しかし,最初に書いた手紙に見られた表記上の誤りが,授業後清書したものにはずっと少くなっている。「相手に分かるように,よみやすく」ということや,特定の相手を強く意識したからであろうか。また,書き直す時には表記の誤りをなくすというふだんの指導のせいであろう。
以上,アからクまで,主として指導したことを観点に,それが「手紙」にどう表れたか考察した。評価は,指導のねらいや,意図に即してなされるべきだと考えるからである。
B 「構成」についての評価
組み立てを評価する観点は,まとめると次のようなことがあげられる。(構成メモをみる観点)
ア だれに読ませる文章かを考えた組み立てになっているか。
イ 組み立ては,文章の目的や種類に適しているか。
ウ 主題の出し方はわかりやすく効果的か。
エ 材料の順序はわかりやすく効果的か。
オ 段落分けは適切か。
カ 省いたほうがよい段落はないか。
キ 導入の段落,結びの段落は役割を果たしているか。
ク 段落の役割からみて,その段落の長さは適当であるか。
ケ 段落を補う必要はないか。
実際の評価にあたっては,文種,指導のねらい等により,具体的な基準を作って,ひとりひとりに対し行うことになる。「こう直す」という見方よりは,子どもは,何をどう表そうとしているのか,「構想メモ」から読みとることが大事である。そして,子どもの見通しや意図を生かす方向で,内容の充実や,分かりやすさを増すようにしてやるべきだと考えている。
C 作品(手紙文)
最初に書いた手紙,組み立て,終わりに書いた手紙を参考にのせる。A君のおじいさんあての手紙である。(中位の子)
〈最初に書いた手紙〉
おじいちゃん,お元気ですか。ぼくは,元気です。
おじいちゃん,もう秋になりましたね。こっちでは,すずしい風がふいています。おじいちゃんのところは,どうですか。おじいちゃんのところでは,あつさがづづいているだろうと思います。
きのう2万円をぼくに送ってくださって,どうもありがとうございました。おかあさんといっしょに,よろこんでいます。
ぼくは,おじいちゃんからおくってきたお金を,だいじにつかおうと思っています。
おじいちゃんが,近くにいればいいなと思っています。
らい年のなつ休み,あそびに行こうといったら,おかあさん,とてもよろこんでいます。そのことを,たのしみにしています。
さようなら,また,お手紙を書きます。
52年10月4日 ○○○○
長崎のおじいさんから,2万円送ってもらったことに対する「お礼」の手紙である。友だちへの近ごろの様子を知らせる手紙が多い中で,めずらしいものである。構成は,はじめのあいさつ,お礼,おじいちゃんのこと,遊びにいきたいこと,終わりのあいさつ,と,一応整っている。
おまつりのこと,お金の使い道,たいぞうのことを,つけたしている。また,具体的にもなっている。こうして,書こうとすることの全体をとら