研究紀要第31号 児童・生徒の学習能力の発達と授業に関する研究 - 022/043page
えておくことは,大事なことである。
〈組み立てなどの学習後の手紙〉
おじいちゃん,お元気ですか。ぼくは,元気です。
おじいちゃん,もう秋になりましたね。こちらでは,しもがおりはじめ,木の葉が赤くなりました。川の水もすんできました。
おじいちゃんのところでは,どうでしょうか。すずしい風がふいていますか。
十日の体いくの日は,こちらのおまつりでした.ぼくと,お母さんと,弟のたいぞうと,お化けやしきに入りました。お化けやしきの中には,20めんそうや,ドラキュラや,まじんゴングなどのお化けがたくさんいました。ほんもののお化けでなかったから,よかったなと思いました。とてもおもしろかったです。
おじいちゃん,このあいだ2万円をぼくとたいぞうにおくってくださって,どうもありがとうございました。ぼくはとてもうれしかったです。おくってくださったお金で,えど川らんぽのたんてい小せつ,「おうごんひょう」を買いました。まだ,読みはじめていません。
また,たいぞうもバットを買いました。たいぞうは,朝から,ばんまで,6年生や,5年生のお兄ちゃんと,毎日毎日野球をしています。
らい年の夏休みに,長さきへあそびに行きます。お母さんが言っているのです。たいぞうだって,よろこんでいます。
おじいちゃん,だんだんさむくなりますから,おからだに気をつけてください。 さようなら
昭和52年10月13日
おじいちゃんへ ○○○○
最初の手紙と比較すると,段落立て方がすっきりし,段落の長さも適当である。内容も多くなっている。「おまつり」のことをつけ足したのは,「知らせること」の例文で学習したからであろうか。学校での様子を知らせるのでなく,暮らしの中のことを知らせているのは,おじいさんを意識してのことであろう。
7 終わりに
○ 授業における評価の機能を高めるには,作文の指導事項を学年に即して明確にしておくことが必要である。そして,授業で,表現の各過程のどこを重点に行うのか,どのような能力をつけようとするのか具体的にとらえ,指導計画の中に評価の観点と基準とを用意しておかなければならない。このことは,なかなかむずかしいことであるが,大切にしたいものである。
○ 作文(作品として)の評価については,その内容も形式も客観的な測定の困難なことが多いので,測定と評価を大まかに含めた「評価の観点」といった考え方が出されている。しかし,これも具体的な項目になると,その人の文章観,指導観の違いによってさまざまであり,自分のクラスの評価に直ぐ適用できるようなものはないであろう。それで,これ等の案を参考にし,自分なりの(学年・学校)評価計画(観点・基準)をつくっていくことである。また,子どもの作品に多く接し,それを見る目を自らきたえておきたいものである。そして,子どもの発展の可能性を適切に見つけ出し,表現力をのばす評価をしなければならないと思う。
○ 構成を指導する場合は取材を豊富にするのが前提である。材料を検討したり,分類したり,必要なものを選んだり,順序立てたりして,構成していくのが基本だと考えるからである。
○ 3年生の段階では,いわゆるダラダラ文から抜け出させることが必要である。そのためには事柄ごとにまとめ,一つの事柄(話題)で一つの段階を構成することを基本と考える。これには,段落にまとめる場合と,段落を分ける場合がある。ただし,事柄のみとめ方,事柄を分けるカテゴリー,その時の想の流れ,段落の長さなどが関係してきて簡単にはいかないのである。
要するに,分かりやくく書くということと,できるだけ意図的・計画的に書くことを大切にさせることである。
○ 文章の構成は,はじめ,なか,おわりと大まかに決め,それぞれを,いくつの段落にするか考えていくのがよいのではなかろうか。この場合やはり構成メモを作らせるのが効果的である。
(担当 芳 賀 常 夫)
参考図書 ○作文指導の原理と方法(光村図書)
○作文指導事典 (第一法規)