研究紀要第31号 児童・生徒の学習能力の発達と授業に関する研究 - 024/043page

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1 研究のねらい

 社会科のねらいである「社会生活を正しく理解させる。」「社会の進展に貢献する態度や能力を身につけさせる。」ために,要素分析や指導方法の研究分野からきりこまれてきた傾向がつよい。しかし,児童ひとりひとりの学力の向上を図るためには,授業過程において学習反応の即時は握と評価それに対応する指導調整を行ない,その学習の結果を授業分析,学習前後の諸調査などの方法を通して評価のあり方を考えてみたい。

 学習評価は,評価の対象である児童が,学習する目標に対してどんな位置にあるのかを見定める面と,児童を目標に引きあげつつ教師の指導がどうなのかという二面が考えられる。授業の中で「何のために,何を,どう教えるか」ということや「この子を何とか目標に到達させてやりたい」という教師サイドの考え方,子供サイドに立てばただ「何がわかったか」だけでなく「何をどう受けとめ,どう定着し,行為化されていくのか」という,わかり方のすじ道や変わり方を明らかにすることも必要である。

 よい授業の創造という観点から学習評価を考えてみると,授業のなかで刻々行なわれ,指導の最適化を目ざして,指導目標や指導過程のフィードバックがあり,自己反省があって,次時への動機づけを生み出すものと考えられる。このように評価は,学習指導と表裏一体となって存在し,重要でありながらともすると形式的になり,実際の学習指導に生かされていることが少ない現状であると思う。授業の最後や単元のまとめの段階で「○○が理解できたか。」という教師の立場からみた観点のもとに,ペーパーテストや観察による方法がとられてきた。しかしこれは,児童の学習成果を評定するという一面にすぎないものと考えられるまた反面には,授業において,今,児童が目標に向かって,どういう状態でいるのかを見きわめ,指導改善の診断としてなされなければならない。

 情報化社会の中にあって,児童の資料活用力の育成は重要であることはいうまでもなく,欠くべからざるものである。授業において,学習者である児童自身が,自己を評価することも大事なことである。しかし,資料そのものを操作する上で,教師自身により,児童を刺激する場合がきわめて多い。従って,児童の自己評価すらも,前者の評価と考えてもよいと思われる。

 学習の目的に即して必要な資料(参考書,統計グラフ,地図,年表など)を選択したり,活用のしかたをくふうしたり,正しく読みとったりする力,いわゆる資料活用力は,問題解決学習の中で養われるものである。そこで評価は,主として学習過程の中で行なわれることになる。

 資料活用力の評価を中心に,授業過程において具体的な目標にもとづいての反応の診断,評価とそれに対する教師の働きかけから社会科の望ましい授業を行なうための条件を考えてみたい。

2 資料活用力と評価の観点

授業過程における評価を最も効果的にするための基本条件としては
(1)「何をどう評価するのか」の目標が明確になっており,具体化されていなければならない。

(2)評価を最適にするための場と機会,方法などが整っていなければならないし,

 学習活動の面では
(1)児童の学習状況が正しくは握されなければならない。例えば各種のグラフや説明図の作成,話し合い活動の結果の内容を具体的にノート等に記述するというような構成活動や作業学習を学習活動に適宜入れていく等。

(2)その結果,指導に役立つ具体的な評価資料が収集できなければならない。

(3)指導→評価によって,学習活動そのもの。が一層深化し充実していく可能性がなければならない。

 6年生の資料活用力育成の重点は,次の4点と考えられ,評価も当然このような観点から行なわなければならない。
(1)資料を収集する力


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