研究紀要第31号 児童・生徒の学習能力の発達と授業に関する研究 - 029/043page

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めにも,多くの問題意識を持たせるためにも十分な資料である。地図帳は常に持参され,常掲の大きな世界地図もあるが,これらが活用されているかどうかは疑問である。
 収集はしていても,問題解決のために使用されていないという現状である。資料として中学校の教科書をあげているのは,兄や姉からゆずり受けて読んでいるからであろうか。
 新聞,ニュースなども大切な資料であることを意識させていかなくてはならない。

 資料への興味・関心について
 資料の一つである地図にどの程度の関心を示しているかを考えると,「見る」ことが好きだと100%近く答えている。わずか4名の児童ではあるが,「地図記号がわからない。」「複雑でわからない。」という理由などで,興味を示していない。少数ではあるが,指導上留意しなければならない。「見る」ことが好きだという児童は,ひとりでイメージを広げながら,未知の世界を知ろうとしているからだと思う。
 世界地図の略図は,35%の児童が,すでに書くことができた。

 資料と情報について
 設問のEから,児童の情報源として,テレビの果たす役割が大きい。思考をともなった見方を指導していけば,いきた情報処理能力を培われるものと思う。書物からは8O%近い児童が知識を得ている。このことは,資料として定着されていると考える。写真から知ったということがみられないのは,資料の読みとりと関連して,今後の指導に十分配慮したい。

 問題意識の傾向
 学習をすすめていく上で,児童が問題を主体的にとらえていくことは,大切なことである。また,単元に対して,どのような期待を持っているか,教師はは握する必要がある。
 人々の生活について学んでいきたいという問題をもった児童は60%で過半数以上であった。予想された通りであったが,学習問題として,多く設定したい。

 資料の選択について(収集の吟味)
設問H 世界の気候帯図とあわせて,問題を解決するために必要な資料を選択させた。
その1,その2については70%の選択ができた。その3については50%弱であった。これは,イギリスという国名は知っているが位置が正確に理解されていないからであろう。
 資料を選択するにあたっては,一つの事象を多面的に考察する素地を養っておくことが大切である。

 資料の読みとり
 設問Iは,「人口分布図」を見て,わかったこと,気づいたことなどを自由に記述させ,児童の資料を読みとる力の傾向をとらえた。
○ A児について
 学級で上位群に入るA児は,主体的な思考と判断で,事実の読みとりだけでなく,かなり深く読みとっている。特に「人口の少ない所はあまり産業が発達していない」というとらえ方は,今後の学習に生かし,他の資料解釈に適用(転移)させていきたい。中・下位群の児童に対しては,個別指導をとり入れ,表面的な読みとりにおわらせないように配慮する。
○ 学級の傾向
 資料から事実の読みとりに終わった児童は10%にすぎない。他は,何らかの形で,自然条件をうらづけながら解釈していた。しかし,産業,政治,経済,交通との関連からの見方,考え方が比較的少なかった。資料から読みとれる事実だけでなく,事実の背後にあるものをとらえる力をつけさせなければならない。


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