研究紀要第31号 児童・生徒の学習能力の発達と授業に関する研究 - 040/043page

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世界地図,地球儀などの活用により新しいものさしを持って,世界の国々を今後みることができるようになる。これが,指導後に期待する児童の姿である。どのように達成されたかを評価するため,意識調査を指導後にも行った。また,五段階評価により,資料の活用する力を測定した。
 意識調査では,資料の収集の際に大切である資料の種類に対して意識が高まった。地球儀や世界地図に対しても身近かな資料となり常に活用できる状態が形成された。
 世界地図に対する関心も事前は35%の児童が略図を書くことができたが,指導後は,60%の変容を示した。略図が書けるということは,児童がそれだけ,世界地図に親しむことができたと思う。
 情報源としてのテレビの視聴は,メモをとり資料として利用する姿が少しずつではあるがみられるようになってきた。
 事前調査設問Hは,いずれも事後調査では90%台になり,資料の選択する力がのびたと思う。「世界の人口分布図」による自由な記述を分析すると,この単元で育成した資料の読みとる力の一つである事実の背後にあるものをとらえていた。
評定尺度を設け,資料の利用する力を次のようにして測定した。

段階
評定・尺度 \ 児童
1
2
3
4
5
5
教科書,地図帳,社会科資料集など学習に関係ある資料を進んで集め利用している。      
4
教科書,地図帳,社会科資料集など学習に関係ある資料を利用する        
3
指示すると教科書,地図帳,社会科資料集などの資料を学習に用いる          
2
教えてもらうと教科書,地図帳,社会科資料集をみて,その意味がわかる          
1
教えてもらっても,教科書,地図帳,社会科資料集の資料のもつ意味がわからない。          
33
34
35
     
8
     
10
 
9
   
6
     
2

ペーパーテストでは評価することのできない態度などは,どうしても主観的な観察による評価となってしまう傾向があるので,より客観的にし,信頼度を高めるために,評定尺度を設け,五段階評価を考え試みた。この結果,資料に対してのイメージが以前よりふくらみ,問題解決に必要な資料を選択して,利用するようになってきていることがうかがわれた。

A 新しい資料への出合い

 社会科学習において,資料を使って学んでいくことは,児童の好むところである。この単元の学習では,地図を基本的な資料として活用していくことが多いので,目的によって多面的な読みとりができるようにしなければならない。地球儀の場合も同様である。
「−この地球儀から,いろいろなことがわかるんだなあ。」という声を耳にしたとき,資料に対するおどろきもひとつ評価となりうると思う。ここで出合った,地球儀や世界地図は,今後の生活の一部になるであろう。
 そのためにも,社会科学習以外の日常指導や海外からのニュースについて話し合う場でたえず,地図や地球儀により,位置,自然,景観,関係について見識を広めたい。このように資料を活用する力は,常時使用することによって高められる。

B 指導法をふりかえって

 児童の変容を考えてみると,指導前の期待値に近い姿にのびていることが見られるが,指導法として次のことについて反省された。
○資料の収集の方法についての指導は多くされ,児童も理解されたが,具体的に苦心して,必要な資料を収集するという指導の場の設定が足りなかった。
○評価基準,観点などを設けて,指導してきたが,その結果から,フィードバックの必要が生じた場合,指導方法や時期をもう少し明確にして,行なわなければならない。


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