研究紀要第31号 児童・生徒の学習能力の発達と授業に関する研究 - 041/043page
○地図,地球儀などの資料に対して,児童は多くの興味を持っていたが,指導事項であるそのちがいや特色の必要性が持たれていたかどうか,この点から問題意識がうすいと思われる,その手だての努力が必要であった。
5 考察
地図,地球儀,統計,図表,写真などの資料を活用しながら,世界の自然環境の概略をは握させることは,この時期の児童にとっては,新しい資料でもある地球儀の特色などから使い方ができるようになるまで,興味のひかれる学習であった。
しかし,児童の持っている力はさまざまであるため,学習指導過程の評価を大切にして,この世界を概観できる力を少しでも多く身につけさせようとしてきたわけである。
そこで教師に課せられた「評価する」責任において,いくつか考察することにする。(1) 資料の収集と選択の評価
〈評価1〉から
「どんな資料を用意してきたか。」に対して,教科書,地図帳,社会科資料集は,一応「収集」という活動からはずしたいと思う。しかし,中学生からゆずりうけた教科書,何年生かの時の教科書を思い出して持参することは,収集と考えてよいと思う。この単元での資料は常時児童の手もとにあるもので十分であったため,収集の活動は少なかった。そのため,収集の方法と収集の見通しを立てるなどの基本的な条件の指導を多くとり入れた。
次の単元には,この資料の収集活動が活発になると思われる。常時手もとにあるものでは限界性があるからである。いくつかある資料の中から,学習のめあてを達成するためによりよいものを選択する力は,毎時の学習の積み重ねの中で,選択する観点を意図的に学習する場を設定することに養われるものである。7/9時の場合も,どの世界の人口表を使用するか,二つあるいは三つの資料に目を注ぎ,結果として新しい資料に気づいたことは意義のあることであった。ともすると見のがしやすい出典年度に注目したことは資料の有効性をは握する重要なポイントと考えられる。この場合「つぶやき」「ざわめき」を察知して,理解のおそい児童の指導にあたることも大切である。「これがわかった。」「この資料のおかげで」という学習の自己評価になり,ひとりひとりの児童は,この次には,こんどこそ……よい資料を選ぶという姿勢がでてきたと思われる。
(2) 資料の読みとりの評価
〈評価2〉から
世界の人口分布図から,人々の集中している地域の事実を読みとらせることと全体的な傾向として,平地に多く生活している特色を読みとらせることである。はじめは各自の読みとりや考えを評価してみた。評価の観点として3段階をあらかじめ用意しておき,机間巡視してとらえてみたら,約80%の児童は,表面的な読みとり,対比した読みとりをしていた。ここで,どちらも読みとることのできない児童に対しては「日本の人口分布図」を用意しておき,読みとりの個別指導にそなえたが,どちらか一方は読みとっていたので使用しなかった。ここでは評価によるフィードバックのひとつとして設定したが,理解度が高かったため,次の学習に進んだ。ただ「地域」のとらえ方は,ひとつの型にはまったので,妥当な扱いといえるだろうか。これで,ひとりひとりの児童が実感をともなった理解を得ることができたのだろうかと考えられる。わが国と対比させた指導の配慮が必要ではなかったのだろうかと思う。
〈評価3〉から
地球儀と世界地図,人口分布図と地形図,人口分布図と気候帯図など,二つの資料の対比による読みとりの指導が数多くあった。