研究紀要32号 教師の教育相談的態度の実態調査とその考察 - 020/020page
考にされたい。
@ 傾聴とは何か
傾聴とは,自分自身のためとか,自分の利益を守るためとかの目的ではなく,相手のためのものであり,話し手が自分を一層よく理解し,もの事をはっきり考え,確固たる行動をとることができるように援助するのが目的である。
傾聴(積極的な聴き方)は,決して根堀り葉堀り式の聴き方ではなく,その背後にある「感情」をよりよく理解しようとする聴き方である。A 傾聴の効果は
傾聴をしてもらった経験があれば,その体験の中から,強く実感として効果が感ぜられるものであるが,傾聴の効果として第一にあげられるものはカタルシス(浄化)である。すなわち,相手に言いたいことを言わせて,気持ちを吐き出させ,スウーッとさせることである。第二には,一生けん命に聴くことによって,相手も,自分自身の話し方に気を付けるようになり,自分の気持ちを正確に表現しようとするようになることがあげられよう。
B 傾聴はどうして自己変革をもたらすのか
私たちは,子どもの頃から現在にいたるまで,いろいろな経験を通じて,「自分は少しょうわがままである」「臆病なタチだ」「他人とうまくやっていける人間だ」などの,自分自身についてのイメージを作ってきている。このイメージを心理学では,『自己概念 Self-concept』といっているが,言い換えてみれば,それは各自が心の中に描いた自画像と言うことができる。そしてこの自己概念と,日常生活におけるいろいろな経験は,くい違うことが多いものである。
このような場合,われわれはたいてい,合致する部分だけを取り入れ,合致しない部分は何とか理屈をつけて拒否してしまうものである。すなわち,次のA図のような形になり易く(A型),B図のようには(B型)なりにくいものである。
他人の態度を外側から変えさせようとしても,彼が,心の中の自画像を書き替えようとしなければ,それは不可能である。この頑固な自己概念を変えさせるための条件を作り出すプロセスが傾聴である。言いかえれば,傾聴によって,A型からB型に移行が可能になるのである。
C 傾聴の留意点は
イ.人間はずい分と自分勝手なところがあり,他人から何かされるといい気持ちがしなかったり怒ったりする。そのくせ,それと同じことを平気で他人にする。その一つが「忠告」であり,「お説教」である。
ロ.なぜこちらの気持ちがつたわらないのか。
a 相手の考えを自分の望む方向にむけようとするからである。
b 自己概念を変えようとする外部の力には抵抗が働き,説得に対しては,説得されまえという反作用が起こる。
c 忠告や説教は,おれが指導してやるんだという気持ちがあると,効果が上らない。
d 傾聴をおこなう第一歩は,「相手を説きふせることができるかも知れないという気持ちを無くすことが肝じんである。(担当者 横内直典・佐藤守男・吉川浩先)