研究紀要第33号 学習指導に関する研究 - 035/092page

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{ @ x+2=0 かつ x−5≠0
A x+2≠0 かつ x−5=0
B x+2=0 かつ x−5=0

 @からBのそれぞれの条件を満す解(要素)をとりだすと @{−2} A{5} B
となる。

 方程式を解くということは,すべての解をみつけることだから,解の集合をSとすると,
 S={−2}∪{5}∪
  ={−2,5}∪
  ={−2,5}
となるわけである。

 "または"を用いた方和式「x+2=0またはx−5=0」は,※印の部分を総称した表現であって,この方程式から解を求めるには※印のところにもどって1つ1つチェックすることが必要になるわけである。
 したがって,(x+2)(x−5)=0では,Bの場合が空集合となることが理解できたら,この方程式の解の集合はx+2=0と,x−5=0となるそれぞれの場合のxの値を求めることと結果が一致することを確認して,
(x−α)(x−β〉=0
・暗算で解を求めさせる
答え{α,β}
といった解法を生徒に定着させることがベターな方法といえよう。

 これを,かつて自分達で高校時代に習った"または"を用いた方程式の同値変形をとおして最簡方程式を導き,きれいな答案を要求することは当を得ていないことが理解できると思う。
 "または"を用いた表現が,中学生にとっていかに難解なものであるかは、次の例でわかろう。
3(4x−5)=0  3=0または 4x−5=0
 ここで,「3=0」が,"または"を用いた表現では偽の命題でないことを理解させることは大変なことである。
 これは,前述の※印の手法に従うと,

{ @ 3=0 かつ 4x−5≠0
A 3≠0 かつ 4x−5=0
B 3=O かつ 4x−5=0

となり,@からAからBからとなり,@〜Bの合併集合としてが導き出され,2次方程式と同様にして解を導くことができることを示している。
 しかし,この手法は,中学生にとっては,抵抗のある方法といえよう。
 以上のべてきたように,1つの原理・法則をつきつめていくことによって,単にくわしい解説や深い理解をさせることにとどまらず,その教材の指導の比重のかけ方がちがってくることが,実際的にはより重要なことになってこよう。

生徒のつまずきを予測し,その理由を考え,解決のための具体策を立てておくようにいわれますが,具体的にはどのような視点からすればよいのでしょうか?

 新しい教材を扱うときに,生徒がどのようなつまずきをするかを予測し,その理由を考えていくことは,教材内容の分折・構造化につながり,ひいては指導順序や指導内容の改善につながっていくものです。次に例を示しながら説明していきましょう。

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