研究紀要第33号 学習指導に関する研究 - 034/092page

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以上のことから,初めに出題された問題は,「2点P',P"をとおる折れ線の中で一番短いものはどれか?」ということに帰着させることができた。
 ここまでくれば,"2定点を結ぶ最短距離?"というまったく単純な事実におきかえられたから,の結論は容易にたどりつけよう。

 このように,核になる考えを素朴なものに帰着させ,昇華させていくことが大切であって,解法のテクニックとして,いたずらにの結論だけを指導しては,生徒にとって挫折感を強調する危険性があろう。

 大きさを比べるというとき,われわれが日常生活で,近ずけてみるとか,閉じているものは開いて一本の線にしてみるとかはあたりまえの考えであろう。このあたりまえの考えを,数学のべースにのせてみることが大切なのである。
 角の大きさを比べるとき,平行線を利用して角を移動させ,近ずけて比較する手法は全く同じ考えにたっている。生徒と一諸になって考えながら展開していきたいものである。

原理・法則を深くつきつめてみて,深みのある,味わいのある授業を展開するようにいわれますが,原理・法則を深くつきつめるとはどういうことですか?

 すでにのべたように,教科書では原理・法則などについて完全な記述をしているわけではありません。中学生の発達段階にみあった表現のくふうがなされています。
 しかし,教科書に記述されているとおりに解説することが生徒の理解に直結するものではないし,教師のつきつめ方によっては,指導内容の比重のかけかたまでちがってくるものです。

〔例〕 因数分解による2次方程式の解法
 因数分解による2次方程式の解法では,実数体系における公理である「ab=0  a=0またはb=0」を利用していくことになる。
 現行の指導要領では,論理用語としての"または"が1年で指導されます。この既習事項をもとにして2次方程式の解法を指導していくことになるが,そうたやすいものではありません。
 教科書での大よその展開をみると,
x2−3x−10=0
・左辺を因数分解すると,
(x+2)(x−5)=0
・積が0になるためには,いずれか一方が0になることだから,
x+2=0またはx−5=0
・したがって,
x=−2またはx=5
・求める解の集合は,
答え {−2,5}

 ここで問題になるのは,では少なくとも一方が0になるという考えが強調されにくいこと,つまり同時に0になる場合が考えにくいことである。
 では,"または"の意味が包含的離接か非包含的離接かがあいまいにみのがされてしまっていること,つまり場合わけしたときの空集合の存在があいまいにされがちである。
 では,"または"を用いた最簡方程式「x=−2 または x=5」から解の集合を{−2,5}と結論ずけるが,そこには以下にのべるようなプロセスを必ずとおらなければならないのをすどおりしているきらいがある。
 つまり,2次方程式で
(x+2)(x−5)=0
で,積が0になる場合としては次の3つが考えられ,これ以外にない。


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