研究紀要第38号 学習指導に関する研究 - 003/081page

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の比較である。この傾向は,小学校・高等学校もほぼ似かよっており,全国的な普及の傾向とも類似していることがわかる。また,この表から,

(1) 光学系の映像機器が圧倒的に多いこと。
(2) 電子系映像機にあっては,テレビに比較し,VTRはその半分以下であり,TVカメラにあっては20%を下まわる極めて低い普及率であること。
(3) 個別学習機器や,反応分折装置は,全国よりは上まわっているものの,まだまだ充実していないことなどがうかがわれる。

 さらに,本年度の教育工学講座の受講者に対しての機器利用についてのアンケートによれば,

(1) 活用される機器の種類は,教科により,教師によってその差が大きい。
(2) 一部の機器(OHP等)の利用に限られる傾向にあり,機器の特性に応じたマルチメデアの利用は,まだまだ普及していない。
(3) 機器の導入については,各校とも前向きではあるが,地域や学校間の格差が大きい。
(4) 機器やソフトウエアの不足から,継続的に利用されにくい。
(5) 準備時間が少なく,ソフトウエアの開発が遅れ,年間計画に位置づけられた活用までには至っておらず,効果的な活用の機会を失うこともある。

などがあげられており,ソフトウエアの供給や付帯設備の問題など,解決しなければならない課題も多い。そのような中にあってもOHPは,その操作の簡便さと,TPの自作の容易さから,70年代から急激に普及し,その利用途も広げられ,内容も充実してきている。ただ,その便利さから,これまで普及してきた映像機器の代替として利用されている面もあり,問題がないわけではない。

殊に,写真資料などをTP化することがあるが,普通教室では暗幕設備のないところが多く,写真の生命である中間調が明瞭に再現されないきらいがある。やはり,OHPではコントラストの強いものの投影に限りたい。また,実物の投影でも透明な素材が主であり,サイエンススタンド等による「垂直投影」においても,プラスチック製などの特殊な容器を用いねばならず,提示の方法にも制約がある。やはり,ひとつの機種に多くの機能を期待することには問題があり,ソフトウエアの製作に時間をかけ過ぎたり,あるいは,奇をねらった利用になったりすることは避けるべきで,それぞれの機器の限界をふまえた活用をはかりたいものである。

2. テレビカメラ導入の必要性とその特性

 明るい室内で,中間調を含む写真等の資料や実物などを効果的な映像として提示できるのは,現在のところ,TVカメラをおいて他にはない。テレビ映像は映写機による映画やスライドの投影に比較すれば,解像度や迫力において劣る点もあるが,1単位時間内で多様な学習を展開しなければならない授業にあっては,スイッチひとつで提示できるので大変便利である。しかも,ほとんどの授業を,暗幕装置の備わっていない普通教室で行っている現状では,ぜひ導入したい機器である。

テレビは学校放送やVTR教材の利用だけでなく,図−2のようにTVカメラを接続することによって,各種の資料,フィルム教材,実物などを直ちに映像化することができる。
図−2 テレビカメラで直ちに映像化
図−2 テレビカメラで直ちに映像化

 本稿では,このようにTVカメラで直接被写体をとらえて,同時限で映像化することを,録画映像と区別して「生映像」と呼ぶこととする。
 TVカメラとテレビのコンビによる「生映像」は,次のような特徴をもっている。

(1) 暗室化の必要がないこと。
(2) 機器の操作は比較的簡単なこと。


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