研究紀要第38号 学習指導に関する研究 - 004/081page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

(3) 他の学習方法との切換えも,スイッチひとつで簡単に行えること。
(4) 児童生徒の机上が明るく,ノートをとるなど,学習活動に支障を来たさないこと。
(5) 映写機のような駆動音や冷却のための送風音がないこと。
(6) 暗幕等で密閉しないため,換気にも支障がないこと。(特に夏季の温度上昇等)
(7) 被写体の材質,色,形,サイズなどの制約を受けず,平面,立体を問わず映像化できること。
(8) 現像,定着等の特別な処理やフイルム等のような特殊な素材を必要としないこと。
(9) カメラの操作により,適切なアングルでとらえることや,トリミングが可能なことから操作者(提示者側)の意図を伝えることができること。
(10) 児童生徒の反応を察知しながら,提示の速さを調節したり,アングルや方位を変えたりあるいは,部分拡大を行うなどにより実態に即応した展開ができること。
(11) 映写機とスクリーンのような特定の位置関係は必要なく,接続コード1本で自在に提示個所を移動することができること。

 このように数々の長所をもっており,今後の普及と効果的な活用が期待できる映像機器である。
これまで,このような長所をもつTVカメラが普及しなかった原因としては,

・ テレビカメラの教育的特性が周知されていなかったこと。
・ カラーカメラにあっては,最近までかなり高価であったこと。
・ VTRの付属機器,もしくは,テレビスタジオの設備の一部としての観念が強く,しかも貴重品扱いされ,日常の授業には持ち込まれなかったこと,などがあげられる。

 最近のカラーTVカメラは,色彩の再現性もすばらしく,小型・軽量で,しかも,CCUが内蔵されるなど,その操作性においても,性能の上でも日進月歩の状態である。その上,価格も13万〜20万円台となり,新教材基準の制定と相まって,その導入の条件は整ってきつつある。

3.テレビカメラの活用法

 TVカメラでとらえた関象をそのまま利用する方法は,監視カメラとして工業用に,あるいは商品管理に広く利用されてきており,学校教育に応用されてからも十数年の年月を経ている。この方法は,ITV(工業用テレビ)やCCTV(閉回路テレビ)と呼ばれるもので,電波による受像と異なり,図−2のように有線のもので,普通教室でもすぐにとり入れることができる。

 TVカメラの授業における利用については,これまでにも様々な学校で試みられてきたが,TVカメラの導入の立ち遅れから,一般にはあまり普及していないのが実状である。そこで,他の機器ではなし得ないTVカメラによる「生映像」の価値について触れ,その利用方法についても述べておきたい。

(1) 実物の提示

 目前にある物体や事象を,直ちに映像として提示できるということは,これまでの視聴覚機器にはない特徴であり,授業におけるTVカメラの必要性もまた,この特性によるものである。

@ 視点の共有化

 多数の児童生徒に対して提示する教材教具は教室の様々な位置から観察されることになるし,教室後方の者にとっては,必ずしも十分に観察できるとは限らない。特に複雑な模型や,小さな実物に至ってはなお更のことである。

 教卓周辺に子ども達を集めて提示したり,説明したりすることがよく行われるが,これとて数名が限度であり,人数が多いほど,かえって観察の方向が不適当になりやすく,教師の自己満足に終わってしまうことが多い。その点,TVカメラで最も適切な位置からとらえれば,そのアングルからの映像をテレビで全員観察できるわけで,提示者の意図を強調した映像によって学習をより有効に進展させることができる。

映像は「言葉や文字」よりも具体的なもので


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は福島県教育センターに帰属します。
福島県教育センターの許諾を受けて福島県教育委員会が加工・掲載しています。