研究紀要第38号 学習指導に関する研究 - 006/081page
ものであっても,教材としての価値があるかどうかは,良く吟味していきたいものである。
特に,図書の図や表などは,読み進めながら理解できるようにすべてが書き込まれていて,ひと目で把握できるように表わされており,学習によって「発見」したり,自分なりの考えで「確認」したり,あるいは「調査」したりするという余地はなく,読者の反応に応じる手だてもない。従って,内容によっては,その図表を分解・合成したり,追記したり,また,学習活動を通して学びとらせる部分については抹消したりするような工夫が必要で,写真資料の提示と異り,扱い方の上で留意すべき点が多い。
このような場合は,むしろ,TP化して学習場面を設定していった方が,手数はかかるけれども,教材としての価値は高いものとなる。やはり,指導のねらいに即して,TVカメラによる提示か,それとも,OHPを利用すべきかを判断して,学習過程に応じた提示法をとることが肝要である。
(2) フィルム教材の活用
16mm,8mm,コンセプトフィルム等の映画教材及びスライド教材は,映写機の普及と共にその数も増加しつつあり,その有効性も高く評価されているが,その利用は,必ずしも十分であるとはいえない。これらフイルム教材は,その材質の点から光源の強さにも限度があり,明るい教室の上映では十分その特性を発揮することはできない。
普通教室では暗幕設備のないところが多く,気軽に利用できないこと,指導計画や教科書に合ったフイルムが少ないこと,準備に手数がかかり操作にも不慣れであることなどがからんで,少ない財源から捻出して購入したものがお蔵入りとなっていることが多いのは残念なことである。
これらのフイルム教材をTVカメラでテレビ映像化して利用すれば,画面サイズの点で迫力に欠けることはあっても,内容伝達の上では遜色なく,しかも,明るい室内で,多様な授業過程の中にも無理なく位置づけることができて便利である。
また,VTRで録画しておけば,必要な時間に必要な内容を再生して利用することもでき,そのつど映写機の設置や暗室化するなどの手数をわずらわすこともなく提示できるし,操作も簡単である。特にVTRは,映画でできにくい「停止」や「反復」などが簡単に能率よくできるので,子どもの反応に応じて分断利用するのにも便利である。
フイルム教材をテレビ映像化するには,図−3のような方法があるので,現有の施設設備の実状に合わせた方法を選択すればよい。A〜Cの方式は,いずれもテレビが30コマ毎秒に対し,映画では24コマ毎秒,16コマ毎秒などで差があるためにスライドの場合と異り,多少のフリッカー(ちらつき)が生じる。ただ,撮像管(ビジコン)には残像効果があり,また,ALC(自動光量補正)などの働きも作用して,実際にはさほど気にならない。Dのテレシネ装置では,映写機そのものを改良しているものが多く最も理想的であるが,価格の点でなかなか導入できないのが実状である。