研究紀要第38号 学習指導に関する研究 - 010/081page
で,多少費用がかかっても,デザインの面でも機構においてもしっかりしたものを作って,利用上支障のきたさないものにしておきたいものである。
なお,本機に使用されたTVカメラは,日立製3電極単管方式のカラーカメラVK−C700で,価格は,218,000円である。また,提示機の製作は,福島AVセンター(福島市小倉寺中ノ内9-5)に依頼した。
6.利用上の留意すべきことがら
指導要領の総則に,配慮事項として,「視聴覚教材などの教材・教具や学校図書館を計画的に利用すること。」と示されているように,教材として価値あるものが備えられていながら,活用の好機を逸してしまうことのないように,指導計画に位置づけておきたいものである。
月・学期を基準に単元配当をしている年間計画を,せめて時間単位の学習事項まで表わし,それぞれの時間で必要な主な教材・教具名や実験実習名を記入した一覧表を作っておく必要がある。これは単なる見通しをつけるためだけでなく,作成過程において,指導過程の概要も具体的に把握されてくるし,現有の施設設備の活用についても検討することになり,指導の展開にあたって,見通しをもった準備もでき,有効な利用もはかれることになる。新指導要領に基づく指導を進めるにあたって,全職員で教材教具の再点検を行い,有効な活用を目指したいものである。
本稿で述べてきたTVカメラ,あるいは,それを多目的・効率的な利用をはかるための「マルチ教材提示装置」の活用にあたっては,次の諸点に留意して,指導プランを立てる必要がある。
(1) 本時の学習目標を達成するために必要な内容であり,学習活動を促すものであるか。
@ 基礎的な事実認識の資料(学習の出発点)
A 問題発見の資料(課題の認識と解決の見通し)
B 変化や推移を予測したり,推論したりするための資料(高次な思考活動への誘導)
C 組み立てた論理や考察などを実証するための資料(検証のための事実及びKR情報)
D 情意を高めるための資料(雰囲気の醸成)
E 範技や学習方法の伝授的内容(効率と安全性)
F 学習結果や成果を発表するための資料(研究物,作品など)(2) TVカメラによる映像が,他の提示法よりも適切なものであるか。
@ 写真や実物などのように,OHP等では提示できにくいものであるか。
A 板書や演示など,教師の直接の働きかけの方が適していないか・
B 画面のサイズの点で問題はないか。
C VTRやフイルム教材との違いはどうか。
D 他の提示法との併用の必要はないか。(3) 提示内容は,集団全体に対して同じであっても,個々のとらえ方には差異のあることを認識しているか。
@ 子ども達のとらえ方が,同一であることを期待しているか,それとも,様々な見方を要求しているのか。それに応じた映像であるか。はたらきかけはどうか。
A 映像は一過的であることに留意し,必要に応じて映像のコピー(映像と全く同じでなくともよい)や資料が準備されているか。
B 映像をもとにした学習活動を展開させようとするとき,その場面がひとりひとりに与えられているか。(4) 受動的な学習になっていないか。
@ 学習活動を通して獲得させるべき内容を,映像の提示で奪ってはいないか。
A 発問や反応の取り上げ方など,提示に伴う教師のはたらきかけが,一方的画一的でないか。
B 提示量(学習内容)や展開の速さは,子ども達の実態に即しているか。
C 学習の展開に応じて,提示内容を選択したり,追加できる,柔軟な指導プランになっているか。
D 学習上の要求に応じた内容の提示が,即