研究紀要第51号 「学習指導の個別化 個に応ずる研究」 -003/080page
業ごとに確かめをする。
〈2〉 学習指導カードと学習カードにより,授業ごとに7〜9人の児童を中心に意図的・計画的に「個を生かす」働きかけをし,一題材の中ですべての児童を生かすようにする。
〈3〉 授業ごとに,一斉指導の場で数人の児童に「個を認める」働きかけをし,一題材の中で少なくとも1回はすべての児童を認めるようにする。 (3) 研究の結果
[1] 検証授業
解決策に基づく検証授業を9〜10月の期間中継続し,3回の授業研究を実施した。
[2] 解決策の効果の判定
解決策の効果は,検証前(9月上旬)と検証後(11月初旬)に実施した,(ア)児童のアンケート,(イ)イメージテスト,(ウ)作品の造形分析,(エ)児童の感想文について前後の変化を比較した。
その結果,(ア)と(イ)の検定により,学習の喜びや充実感と深くかかわる項目で有意差が見られ,また,(ウ)と(エ)からも教師の意図的・計画的な「個の特性を生かす」働きかけによる効果と判定できることが見られた。更に抽出児の中から4名を選び,指導過程や作品分析をもとに具体的に考察した。
このような結果から,我々は,本研究における解決策を単元内進度別学習におろすことにより,児童一人一人が真に学習そのものに喜びを持ち,進んで学習に取り組むようになるものと考察することができた。
(4) 研究のまとめ
本研究を推進する過程において,意図的・計画的に「個の特性を生かす」働きかけの効果的なあり方が追究されてきたが,その主なものを解決策とのかかわりで述べる。
[1] 指導目標と課題
「真に喜びのある学習の成立」を図るためには,児童自ら学習の目標を選び,決めることから出発すべきであること,また,問題意識をもって学習を進めさせるためには,自己の「課題」を記入させ,自分自身を見つめ直し,それらを克服することによって自己実理が図られるようになっていくことが確認された。
[2] 個の特性のとらえ方
本研究では,個の特性を性格と教科で育てる学力の両面よりとらえることとし,6項目を学習指導カードにまとめ,活用したが,大切なことは,日に日に成長していく児童の姿を具体的にとらえていくことである。
[3] 指導の適自性
児童一人一人の個性を尊重しながらも,児童の精神的な発達や技術の向上に対する欲求にも,十分に応じた指導が必要であり,それがゆきとどき,それを越えてこそ真の個性の伸長につながると考える。個に応じた働きかけの効果を大きなものにするためには,個の発達段階や過去の作品分析などの巨視的なとらえ方と,現在の学習状況などを的確にしかも微視的なとらえ方の双方から見極めなければならない。
[4] 学習指導カ一ドの活用
学習指導カードは,指導記録としての価値は高く,観点別評価を適正なものにするためにも,また,以後の指導の基礎資料としても有用度は大きい。しかし,ここでとらえた児童の姿は,あくまでも,成長発達途上における一時点のものであることに留意する必要がある。
〔II〕 体育科 「個の意志を生かす研究」
一人一人に楽しさと充実感のある学習の成立をめざして(1) 研究のねらい
児童一人一人が自己の意志を生かし,自己の能力に適した課題をもって,自主的に学習に取り組ませ,個に応じた働きかけをしていけば,楽しさや充実感のある学習が成立するであろうと考え,「個の意志を生かす」学習指導のあり方を追究しようとしたものである。
(2) 研究主題の解決策
[1] 前提条件
○ 個の意志を生かすために,下記の資料を活用する。