研究紀要第51号 「学習指導の個別化 個に応ずる研究」 -008/080page

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を進めることができるような手だてや場を設定すること」,三つは,「個の特性や学習の状況に応じた働きかけをすること」である。以下,それぞれについて,具体的に述べてみたい。

[1] 「生徒一人一人に,単元における学習の流れと,毎時間のめあてをとらえさせること」について

生徒は,単元の学習の流れはもちろんのこと,毎時間どんなことを学習するのか,わからないままに授業にのぞんでいることが多いのではないだろうか。このように課題意識をもてないでいる生徒にとっては,当然のことながら,教師中心で進められる一斉授業になりがちである。このような授業では,生徒たちの学習に対する意欲や自主性を高めることはできないと考える。生徒にとっては,毎時間の授業は一時間限りのもので終わってしまい,前時から本時,本時から次時への関連も発展もないままに進められ,いわば閉じた授業で終わってしまいがちである。

そこで,生徒自らが,単元の学習を進めていく中で,その授業の位置づけをはっきりととらえ,毎時間の学習の関連や発展をとらえられるようにするために,「学習のめあて表」を作成し,単元の学習に入る前に生徒に配布する。それによって,単元の学習の導入時に,その単元の流れの大筋や内容及び,これからの学習に必要な既習事項を確認させる。既習事項については,一人一人の生徒自らが,前提条件テストやそれまでの学習結果などをもとに,自己のつまずきや到達度をとらえ,個に応じためあてを持てるように配慮する。一方,毎時間の授業においては,主に導入とまとめの段階で「学習のめあて表」を活用し,生徒がはっきりした課題意識をもって,授業に取り組めるようにする。また,授業の中で,あるいは生徒の自己学習の中で,必要に応じて活用するのはもちろんのことである。

[2]の前半 「課題についての自己のつまずきや到達の度合いを確認させること」について

課題の解決にあたって,「何が(どこが)わかって,何が(どこが)わからなかったのか」を,生徒自らがとらえることは非常に大切なことである。特に,自分はどこで,なぜつまずいたのかをとらえることは,学習を進めていく上で極めて大切なことである。しかし,多くの生徒にとっては,自己のつまずきをはっきりととらえられないでいるのが現状である。そのために,そのつまずきが解消されずに終わっており,後々の学習にもそれが継続することになる。特に数学科の学習内容は,系統的な面を強くもっていることから,その影響は非常に大きい。

そこで,学習の過程や学習した結果について,こうした自己のつまずきや到達度を確認させるための手だてとして,「自己評価票」を準備し,毎時間の学習について,学習のめあてがつかめていたか,つまずきはなかったか,つまずきは解消できたか,何を学習したかはっきりわかったか,コース別学習ではどのコースを学習したかなど,多面的に自己評価できるような工夫をする。

[2]の後半 「個に応じた学習を進めることができるような手だてや場を設定すること」について

生徒一人一人のつまずきや到達度に応じて学習が進められるようにするため,必要に応じて,次のよう.な手だてを授業の中に取り入れる。

一つには,ある内容について学習した後,形成的評価問題によって,各自の到達度を確認させ,その結果に応じて,自己の学習コースを選択し,学習を進めていく方法である(分枝型学習)。すなわち,つまずきがなかった場合には,応用・発展的な問題を中心とした学習(Cコース)を行い,より一層の定着を図る。一方,つまずきがあった場合には,まずつまずき解消のためのコースに進み,それぞれのつまずきに応じた学習を行う。そのために,あらかじめ生徒のつまずきの原因を予測し,そのつまずきを解消するための補充問題を準備しておき,生徒が自己のつまずきをとらえ,解決しやすいような配慮をする。つまずき解消後,基礎的(Aコース)あるいは標準的(Bコース)な問題と取り組むコースの学習を行い,学習をより確かなものにする。


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