研究紀要第51号 「学習指導の個別化 個に応ずる研究」 -009/080page
なお,この分枝型学習がより効果的に進められるようにするため,形成的評価問題,つまずきとその解消のための補充問題,コース別学習課題からなる「学習プリント」を使用する。
もう一つの方法として,あるひとまとまりの学習がすんだところでの演習の時間などについては,「学習のめあて表」や「自己評価票」の結果などをもとに,自己のつまずきや到達の度合いをとらえ,その時間における自己の学習課題を選び,その解決にあたらせる方法である。当然のことではあるが,教師は一人一人の生徒が適切な課題を選択しているかどうかを確かめ,適切でないと思われる場合には,助言指導を与えることによって,個に応じた学習が進められるようにする。
[3] 「個の特性や学習の状況に応じた働きかけをすること」について 一人一人の生徒の,数学の学習への取り組み方や,個の特性の把握が十分であればあるほど,個に応じた働きかけが一層可能になる。このことは,これまでの“個を認める”,“個を生かす”研究でも実証されているところである(福島県教育センター紀要41号,47号を参照)。
そこで,本研究においても,これまでの研究の成果を生かしながら,教科の特質などを考慮し,個に応じた働きかけに役立つ「学習指導カード」を作成し,これによって,いつ,どこで,どの生徒に,どのような働きかけを行うかなど,意図的・計画的に行うことができるようにする。したがって,この「学習指導カード」は,生徒一人一人の特性を多角的・多面的にとらえて集約できるような工夫をする。そのための調査・検査として,Y−G性格検査,徴候観察,数学の学習についてのアンケート,前提条件テスト,事前テストなどを実施する。
一方,授業の中では,形成的評価問題によって,一人一人の生徒のつまずきや到達の度合いをとらえ,分枝型学習の中で,個に応じた働きかけができるようにする。
更に,方程式の学習については,生徒の「自己評価票」の記録や,毎時の徴候観察の結果を,「学習指導カード」に記人しておき,その後の指導に生かせるようにする。
また,「自己評価票」には,教師がコメントなどを記入することによって,一人一人の生徒への働きかけを行い,教師と生徒の人間関係を深めるための一つの資料ともする。
なお,「学習指導カード」や「自己評価票」への記入については,1時間につき10名程度にし,無理なく,継続的にできるようにする。
なお,一人一人の生徒に確かな学習を成立させるための,個に応ずる働きかけとその資料を示したのが下記の「研究の構想図(1)」である。これは,個の確かな学習を成立させるために,前提条件テストや形成的評価問題などの結果をもとに,個々の生徒のつまずきや到達の度合いをとらえ,示唆・援助・助言などによる知的な働きかけをすることと,Y−G性格検査や徴候観察の記録などをもとに,個々の生徒の特性をとらえ,励ましや賞賛などによる情意的な働きかけをすることを示したものである。