研究紀要第51号 「学習指導の個別化 個に応ずる研究」 -022/080page
イ 事後研究会の記録より
検証授業の事後研究会は,授業観察に参加した14名のプロジェクトメンバーと授業者,研究協力委員により「2−1−2方式の授業研究」の進め方に基づいて実施した。この進め方は,学習指導案に「観点」として位置づけた研究主題の解決策(□1〜□3)と本時のねらい(○1,○2)について,観察記録,観点の評価に話し合いの焦点を絞ることにより,効果的に事後研究会を進めようとする方法である。すなわち,「研究主題の解決策が,授業場面において,いかに効果的に作用したか」について,検証授業の流れにそって,話し合いを深めることにより,検証授業を通して,解決策の作用効果を確かめるものである。
なお,観点の評価は,観察記録の欄に示された具体的な観点に基づいて,−1(改善の必要がある),0(おおむね達成),+1(十分に達成)の3段階の評定尺度により行った。
以下に,事後研究会の内容について,研究主題の解決策□2,□3に関するものを取り上げ,その要約と考察を述べることにする。
解決策□2について
解決策□2にかかわる観点は,4,6,7,8である。
これらの観点は生徒が形成的評価問題をもとに,自己のつまずきや到達の度合いを確認し(観点No.4),それに応じて学習コースを選択し,自已の課題に取り組む(観点No.6)もので,授業展開の中心となる箇所である。教師は,その課題が解決できるようにするため,まず,つまずきの解消のための働きかけ(観点N o.7)を行い,次に,つまずき解消後の学習コースの選択と,その解決のための働きかけ(観点No.8)を行った。
本時の形成的評価問題の全問正解者は29名,一部に誤りがあった者は13名であった。前者はCコースに進み,後者はつまずき解消のための問題に取り組んだ。また,つまずき解消後のコース選択については,Aコースが10名,Bコースが3名で,Aコース選択後にBコースまで進んだ生徒が6名であり,この間に働きかけた延べ人数は31名であった。
観点No.7,8において解決策□2に関する,個に応じた働きかけがなされたが,そのことについて,授業観察者の発言は次のように要約できる。
・ つまずきのあった生徒には,結果だけでなく計算の方法まで説明させ,より確かなものにさせようとする意図が十分うかがわれた。
・ 簡単な文字式の計算などでつまずいている生徒が多い。そのためにも,事前にそのつまずきを予測し,その補充問題を準備して解決させていく方法は,非常に効果的であった。
・ Aコース,Bコースを選択した生徒には,個の考えを尊重しながら,適切なアドバイスがなされていた。
・ つまずきは全員解消できたが,コースの問題が時間内に終われない生徒もいた。しかし,解き方は理解しているので心配はないと思う。
・ 個々の生徒への働きかけとして,机間巡視による指導方法が多い。この授業でのように,生徒が教卓のわきにいる教師のもとに来て指導・援助を求める方法は,短時間で多くの生徒に個別指導ができるという効果があるように思われる。また,このような指導を継続していくことにより,自主的に質問に来る生徒が増えてくるのではないかと考える。
・ 生徒は教師の援助を受けながら,自己の課題解決に向けて,意欲的に取り組んでいた。
・ 生徒に「わかった」「できた」という成就感を強く味わわせていたと思われる。
・ 3回もチェックを受けた生徒もいたが,そのたびに励ましのことばをかけられ,うれしそうであった。このような生徒に対しては,特に,励ましや賞賛のことばをかけることなどの配慮をすることにより,学習意欲を高めさせることが大切であろう。一方,自分から進んで指導を受けに行けない生徒については,教師が積極的に働きかけをしていくことが必要であり,生徒の特性把握がここに大きく生かされると思う。
・ Cコースの生徒には,直接的な働きかけがな