研究紀要第51号 「学習指導の個別化 個に応ずる研究」 -023/080page

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いだけに,彼らのまちがいが見落されがちである。そのためにも自已評価票を通して,つまずきがなかったかを確かめ,それによって働きかけをしていくことは大切になってこよう。また,問題の量や質を考えたり,生徒の自己評価や相互評価がしやすいような手だてを準備してやることも必要であろう。

以上のようなことから,分枝型学習の中で行われた「個に応ずる働きかけ」は非常に効果的であることが確認できた。なお,この授業の教師の働きかけの方針は,つまずきのあった生徒が中心で,Cコースの生徒には直接的な働きかけは少なかったが,今後の授業の中では,学習内容からみて上位群に対する効果的な働きかけの場は容易に設定できると思われる。

解決策□3について

観点No.1において,解決策□3に関する個に応じた働きかけが顕著に見られた。本時の学習は,前時までのつまずきが解消できているかどうかが直接かかわる内容であるので,この時間の導入では,等式の性質や移項の考え方を用いて式変形ができるかどうかを確認しなければならない。

教師は,前時における生徒の自已評価の結果に対し,自己評価票にコメントを記載することで,すでに個に応じた働きかけをしているのであるが,この段階では,その結果にもとづいて,つまずきの多かった下位の生徒を中心に指名することで,それらの生徒が,ax=bx+cの形の方程式の解き方に正しく解答することができれば,本時の課題であるax+b=cx+dの形の方程式の解き方に入れると判断したのである。

ここでの個に対する働きかけについて授業観察者の大方の発言は,次のように要約できる。

生徒の自己評価票や学習指導カードによる客観的資料によって,それぞれの生徒の性格や能力に応じた働きかけがなされたことは望ましい。

式を変形する過程におけるそれぞれの生徒のつまずきに応じて,働きかけがなされ解消の確認がされていたことは効果的であった。

上位や中位と判断されている生徒であっても今までに移項や式の、計算に誤りが見られたことのある生徒を指名することによって,より確かに理解させようとする働きかけも見られた。

さらに,観点No.10においては,生徒が自己のつまずきや到達度を正しくとらえて,自己.評価票に具体的に記入する段階であるが,このことについて,授業観察者の大方が「正直に正確に記入している」ので「+1」であると評価している。

また,この自己評価票には,生徒各自が自己のつまずきについて具体的に記人し,教師がそれにコメントするようになっているが,授業観察者から,かなりの生徒は,自分のつまずきについて,よく把握して記入していたと発言されていたことが注目される。

しかし,その反面根本的な原因について気づいていないので「−1」であるという発言もあったことは,今後において,一層それぞれの生徒の性格や能力をよく理解して,手をつくした指導をすることの必要性を感じさせられたところである。

生徒は,自已評価票に基づいて学習状況の反省をし,自己のつまずきに対する確かめをしている。教師は,自已評価票の「教師から」の欄にコメントによる返信をすることで,生徒それぞれに応じた働きかけをするとともに,つまずきが解消されたかどうかを,次の授業の導入の段階で確認している。これらのことから,この「自己評価票」を中心とした解決策は効果的であったと判断できる。

以上,研究主題の解決策□2,□3に関する観点を中心に,事後研究会の内容についてまとめてきた。話し合いの中で,生徒の学習への取り組み方などに対する反省意見も出されたが,それは,このような授業に慣れるにつれて,容易に解決できるものであり,学習形態や解決策の改善をせまられるものではないことが確認された。

結論として,研究主題の解決策は適切なものであり,継続的に研究を推進していくことによって,研究主題に十分せまり得るものであるという共通理解を得ることができた。


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