研究紀要第51号 「学習指導の個別化 個に応ずる研究」 -032/080page
(13) イメージテストの結果の比較
イメージテストは,学力の情意的側面の意欲や感情を,生徒が「教科の学習や教材」(評価の次元),「学習における適応性」(潜在力の次元),「学習への参加」(活動性の次元)に対して抱いている形容詞対連想を手がかりとして数量化し,結果の数量変動によって,教材の扱い方や,生徒の学びとりのあり方等,広く学習指導の改善に活用しようとするものである。
本研究においては,認知面の指導に重点をおきながらも,指導の結果,情意的側面の変容を確認する意味でイメージテストを実施した。テストの結果は,下図のプロフィールとしてとらえることができた。事前のプロフィールは,研究前まで抱いていたイメージであり,事後のプロフィールは研究の期間を終えた後(方程式の単元)のイメージである。
プロフィールの見かた 尺度番号の○印は,検定の結果,5%の危険率で有意差が認められた尺度
各尺度の事前における評定得点の平均値のプロフィール 各尺度の事後における評定得点の平均値のプロフィール イメージが好意的方向に変容している尺度は,21尺度中14尺度である。このことは,本研究における,研究主題の解決策に基づいた学習指導の手法が大きく作用したためであると考えられる。
それぞれの尺度について,t検定の結果,たのしい←→くるしい,ゆかい←→ふゆかい,よい←→わるい,おもしろい←→つまらない,つづけたい←→やめたい,あたたかい←→つめたい,の6尺度に有意差が認められた。このことは,以前の学習に比べて,今回の学習は,たのしい,ゆかいな,よい学習であり,おもしろく,あたたかみのある,つづけていきたい学習であるととらえられている結果であると判断できよう。また,まんぞく←→ふまん,まじめ←→ふまじめ,の尺度にふれ幅の大きいことは,学習指導に対しての満足感があり,まじめに反応していこうとする,生徒の感情が働いているものと思われる。
すき←→きらい,の尺度においてほとんど変容がみられなかったことは,数学に対して抱いているイメージが,相当,固定化されている側面があるものと思われる。しかし,本研究における,アンケートの結果や感想文の分析からは,好き,きらいについて変容も認められている。これは,生徒が過去において印象づけられたものが固定概念化しているために,有意差のある変容が認められるまでに,ある程度の時間を要することが必要であることを意味するものであろう。
生徒の抱いているイメージは,生徒の態度形成や行動力の潜在力として重要な要因である。イメジが好意的方向に変容した場合,これからの学習において態度や行動に,好影響を及ぼすことは,容易に予測できることであろう。そのためには,本研究のような手法を用いて学習指導を行うことはもとより,生徒の情意的側面を適切にとらえながら学習指導を行うことが大切であろう。
特に女子生徒については,有意差の認められた尺度が,つづけたい←→やめたいだけであった。女子生徒に対しては,心理的特性からみて,特に,情意的側面をよく把握し適切に受容しながら学習指導を進めていくことが必要であろう。