研究紀要第51号 「学習指導の個別化 個に応ずる研究」 -033/080page
(4)感想文の分析
解決策の効果を判定する一つの方法として,生徒に「数学の授業について」という題で,形式・内容には特に注文をつけずに,自由に感想文を書かせてみた。以下,その感想文をもとに,四つの観点に絞って分析してみる。
○「学習のめあて表」について
「学習のめあて表」(解決策□1)は,単元における毎時間のめあて(到達目標)と,その学習に必要な基礎事項(既習事項)を明確に系統的に記載されている。「学習のめあて表」を一人一人にもたせ,毎時間,めあてをたしかめさせたりして,その活用を図ってきたのである。この「学習のめあて表」について書いている生徒は,42名中6名(男子2名,女子4名)である。その中から主なものをあげてみる。
「……学習のめあて表に合わせて授業がすすんでいくので,きょうは,どこまで,どんな内容について勉強するのか,どのような方法で,この問題を解くのかなど,具体的にわかってきた」(J子),「今度の数学の授業は,単元全体の見通しをもつことができ,きょうは,何を勉強するのか(めあて),今までどんなことを勉強してきたか(既習事項),それが,きょうの勉強とどう結び付き,それが,これからどう発展していくのかなど明確に示されていて大変よく,また,家庭学習の予習復習にも役に立つもので,とてもよいと思う」(Y男),「計画が立ててあるので,授業の内容がよくわかり,予習ができ次の授業の時,簡単に解けるようになってきた」(G子)。
以上のように,「学習のめあて表」により,単元における学習の流れと,毎時間のめあてをあたえておくことは,生徒の感想文からも,学習にとても役に立つと好評であることがうかがえる。
○「自己評価票」について
自分のつまずきなどがわかるのでよいと思うなど,「自己評価票」(解決策□3)に触れて書いている生徒は,42名中10名(男子2名,女子8名)である。
「自分のつまずきがわかり,よい」(R男),「1時間の学習を反省し,自分のつまずきや分からないところがはっきりするのでよいと思う」(P子),「先生からのはげましの言葉などに力づけられ,意欲がわいてきた」(Z子の外多数)。
授業のまとめの段階で実施した「自己評価票」は,生徒にもよいという印象で受け入れられているようである。
更に,この「自己評価票」や「学習指導カード」等の資料を十分活用し,生徒一人一人を理解し個に応じた働きかけのひとつである「教師からの簡単なコメント」は,予想以上に効果をあげていることがわかる。
○「分枝型学習」について
分枝型学習について生徒は,どのような反応を示しているのだろうか。分枝型学習が取り組みやすかったとしている生徒は,42名中,28名(男子13名,女子15名)である。
その主な理由としては,「自分の能力に合ったコースを選んだり,わからないところを解決するコースを選んだりする方法は,やりやすくてよい」(B子),「自分の能力に応じて,コースを選ぶことができて,意欲がわいてくる」(P子),「ぼくは,数学の授業が前より好きになった。それは,自分に合ったコースを選んで学習できるからだ。この方法は,わかりやすくて,おもしろい」(J男),「コース別学習は,もしまちがえても,問題の解き方の基本がでているのでやりやすい」(M男),「コース別学習のしかたは,私にとって,楽しい勉強法だ」(I子),「自分に合ったコースをすすむことができ,おわったら採点もできるからよい」(D子),「自分の力に合ったところから,だんだん難しい方へという方法が自分のためになるからよい」(V男)。
形成的評価問題に取り組み,その結果としての自己のつまずきや到達度により,自己の能力に合致したコースを選択し,学習をすすめていく「分枝型学習」を,多くの生徒は,取り組みやすい方法であるとし,受け入れていたようである。