研究紀要第51号 「学習指導の個別化 個に応ずる研究」 -034/080page
「……今までは,授業がつまらなかったけれど,学習方法がわかったとたん授業がおもしろくなってきた。そのため意欲も出てきた。わからないところは,先生が親切に教えてくれるので自信もつき,計算が少し速くできるようになってきた」(B子)。この中で注目されることは,解き方や考え方の手順が理解できたというところである。そして,もう一つは,「わからないところは,先生が教えてくれる」のところであるが,教師が,生徒一人一人のつまずきや到達度に応じた個別指導にあたっていることをものがたり,さらに,それは,個に応じた適切な指導がほどこされていたという証左であるとも言える。
S男の場合は,「……自主的にすすめていく学習方法になって,とてもやりやすくなった。そして,勉強するのがたのしくなりました。まえは,わからないところがあれば,すぐにあきらめてしまいましたが,今は,わからないところもあきらめないで最後まで考えるようになりました。これからも,今までのとおりの方法で授業を進めてほしい」と言っている。
S男は,自分に足りなかった「ねばり強さ・根気強さ」もついたようだと言っている。今までは,難しい問題に直面すると,すぐに「わからない」といって,あきらめが先に立っていたようだ。これからは,難問に対しても,以前とはちがい,根気強く取り組むようになり,そして,問題を解決した時,それは大きな「よろこび」「満足感」となり,次時の学習への取り組む活力となるであろう。その上に,他教科への転移も期待できるものと考える。
しかし,反面「分枝型学習」は,どうも取り組みにくい,なじめないという生徒も若干名いる。その理由としては,「教科書にそって勉強し,わからないところがあったら先生に質問してやった方がよい」(D男),「何回となくたしかめがあり,いやになってしまう」(Q子),「取り組みやすかった問題もあったが,分数の問題が分からなく,取り組みにくかった」(J子),「三つの問題(形成的評価問題)ができなくて,Aコースを学習したがよくわからなかった」(T子)などがある。この中には,改めて考えてみなければならない点がいくつかあるようだ。
○「満足感」について
生徒の感想文の中で,今回の数学の授業について「よくわかった」「おもしろかった」「楽しかった」「満足だった」と記述しているものは,42名中28名(男子18名,女子10名)である。
「今までは,問題が全然解けなかったので,数学なんかいやだと思いながらやってきた。でも,自分でがんばって苦労してその問題を解いてみると,うれしくなる」(P男),「数学が好きになった。それは,勉強している内容がよくわかるようになったからです」(R男),「以前より,数学が好きになった。それは,問題が自力で解けるようになったので」(H子)。
以上のように,どの生徒も異口同音に,1次方程式の学習内容は,よく理解できたと言っている。問題を解いたときの「よろこび」そして「満足感」,それが「おもしろさ」「楽しさ」につながり,学習意欲を高め,次時への発展として大きく作用していくものであることを,あらためて知らされた次第である。
以上,分枝型学習を取り入れた数学の授業について生徒の感想文をもとに四つの観点に沿って分析を試みてきた。
感想文の中で「数学が好きである」と記述している生徒は,事前と比較すると目だって多くなってきている。
その主な理由は,「数学の勉強の内容がわかりおもしろくなってきた」と述べているものがほとんどを占めており,ここに,解決策が有効にはたらき,その効果のあらわれの一端をみることができるであろう。(5) 抽出生徒の変容
ここでは,研究主題の解決策(□1〜□3)が生徒個々にどのように機能したかを,研究授業におけ