研究紀要第51号 「学習指導の個別化 個に応ずる研究」 -038/080page

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(6) 授業者の感想

「個の確かな学習の成立をめざす研究」を実践して
授業者 福島市立福島第三中学校教諭
                 和光幸男

今回,「個の確かな学習の成立をめざす研究」の研究協力委員の一人として,授業実践の機会を与えていただき,改めて考えさせられることがたくさんあった。自分の授業を振り返り,一方的な教師サイドですすめてきたことを反省している。

この研究を実践して,生徒それぞれが個に応じた学習をすすめるための手だてや働きかけをすれば,生徒自らの力で,自已のつまずきや到達の度合いを明確におさえ,意欲的に学習をすすめることが,よく理解できた。例えば,「数学は,不得意だ」と自信を失っている生徒は,授業中に板書事項をただノートに写すだけであったが,授業の中で,自己のつまずきや到達の度合いを明確におさえ,それに応じた学習コースを選択し,学習をすすめていくうちに「なんとか解こう」とする意欲,難かしい問題を解いた時の大きな喜びなど積極的な姿勢がはっきり見えるようになってきた。

また,「学習のめあて表」と「自已評価票」を常に関連させて利用することにより,授業で使われる既習事項を完全に解決して授業に臨み,その後,つまずきを厳しくチェックし理解を確かなものにしていくという一連の過程が確立された。

はじめは,とまどいもみられたが,「自己評価票」の利用に慣れるにつれて,自己評価も少しずつ厳しさを増し,課題解決への意欲につながってきているように思われる。

以上のことから,数学の授業において,自已のつまずきや到達の度合いを明確におさえ,個に応じた学習をすすめることができるようにするための手だてや働きかけをすることによって,生徒の学習活動を,より自主的・意欲的にすることができるということが明確になった。

今後は,更に,指導内容に応じた有効な手だてや働きかけを工夫し,個の理解に努めながら,より確かな学習の成立をめざして努力していかなければならないと思っている。

5 研究のまとめと今後の課題

(1) 研究のまとめ

本来,学習は個々に成立するものであるが,その程度にはおのずと差があり,その積み重ねが学力差となって現れ,中学生ともなれば,それは一層大きなものになってくる。数学の学習においても,教科の特質から,特に学力差がつきやすい傾向にある。

本研究は,こうした学力差の問題に対処するため,一人一人の生徒の特性を十分にとらえ,個に応じた指導をより深めていく必要性を考え,そのための学習指導のあり方に目を向け,個の確かな学習の成立を目指したものである。

研究の結果と考察については,事前と事後のテスト,イメージテスト,アンケート,感想文の結果の比較や,抽出生徒の変容などをもとに,すでに述べたとおりであるが,ここでは,これらを集約しながら,解決策の効果の判定を中心にしてまとめてみたい。

解決策□1 「学習のめあて表によって,単元における学習の流れと,毎時間の学習のめあてをとらえさせる」について

事後の感想文の中にも,「学習のめあて表」に関するものが多く見られた。そのほとんどが,単元全体の見通しをもてたこと,その時間何を学習するのかがよくわかったこと,家庭学習に役立ったことなどであり,「学習のめあて表」が,生徒によく活用されていたことがうかがわれる。検証授業を通しての生徒の様子からも,それが十分に認められた。このことは,事前・事後のアンケート項目2「あなたは,めあて(何を学習するのか)がはっきりわかって授業にのぞんでいますか」の結果の比較において,危険率5%で有意差が認められた(P29)ことからも推察できる。

また,前提条件テストでは,文字式の計算でのつまずきがかなり多くの生徒に見られたが,事後テストの結果では非常に少なくなっており,方程式の学習を進める中で,これらの基礎的な計算力もあわせて高めることができたと考える。このこ


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