研究紀要第51号 「学習指導の個別化 個に応ずる研究」 -039/080page

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とは,授業の中でのつまずき解消の手だてによるところが大きいと思われるが,方程式の学習を進める上で必要な既習事項について,前提条件テストの結果をもとに,解けた(○),解けない(×)の2段階で,それぞれの問題ごとに,自己確かめをしたことがよかったのではないかと考える。すなわち,前提条件となる既習事項について,自分のできるものとできないものがはっきりととらえられ,そのことによって,授業にのぞむ際に何をやっておかなければならないかを知り,自分にあった学習を進めることができたからであると考える。

以上のことから,「個の確かな学習の成立」の一つの条件である,学習のめあてをはっきりとらえさせるための「学習のめあて表」は,かなり効果的なものであったと考える。

解決策□2 「形成的評価問題をもとに,自己のつまずきの原因や到達の度合いをとらえ,それに応じた学習コースを選択させ,その学習を進める中で個に応じた働きかけをする」について

一人一人に確かな学習が成立するためには,個に応じた学習が進められるような場を設定し,その中で一人一人に十分な働きかけをしていくことが最も重要なことである。そのために,あるまとまりの学習を終えたところで,その学習内容についての形成的評価問題をもとに,自己のつまずきや到達の度合いに応じて学習コースを選択し,学習を進めていくという形の分枝型学習を取り入れることにした。

このような分枝型学習が,一人一人の生徒に確かな学習を成立させるのにふさわしいものであったかどうかについて,生徒の学習への取り組み方,教師の働きかけ,生徒の学習内容の定着の三つの観点からまとめてみたい。

[1] 生徒の学習の取り組み方に変容がみられたか。

まず,このような分枝型学習についての生徒の受けとめ方を見てみよう。すでに,感想文の分析の中で詳しく述べたとおりであるが,かなり多くの生徒が学習しやすかったと答えている。その理由のほとんどが,自分の力に応じて学習が進められたことをあげている。このことは,「おもしろい」「楽しい」といった情意面での高まりや,「意欲的に学習に取り組むようになった」「ねばり強く学習するようになった」という学習への積極的な取り組み方にも現れてきている。このような学習の取り組み方についての変容は,授業者の感想からも十分うかがうことができる。

反面,確かめのわずらわしさ,Aコースの問題もよくできなかったなどの理由から,「どうも取り組みにくい,なじめない」という生徒もわずかではあるがいる。しかも,このような取り組みにくさを指摘しているのは,比較的下位群の生徒である。このような生徒に対しては,一層適切な働きかけに努め,分枝型学習に積極的に取り組めるようにしたい。

[2] 分枝型学習を進める中で,教師は個に応じた働きかけをすることができたか。

第2回目の研究授業をもとに述べることにする。

この生徒たちへの働きかけのねらいは,一つはつまずきを解消させることであり,もう一つは選んだコースの問題を確実にできるようにさせることであった。時間にして約15分であったが,生徒が次々と教師のもとに集まり,休みなく働きかけが進められ,その数は延べ人数にして31名にものぼった。中には,正負の数や文字式の計算でのつまずき解消のために,3回もの指導・援助を受けた生徒もいた。このような生徒には励ましや賞賛をするなど,自信を持たせ,意欲を喚起する配慮が感じられた。また,コースの選択についても,生徒の意志を尊重しながら,それぞれに応じたアドバイスがなされていた。この間,Cコースを学習していた生徒の中に,解答に自信がなく,教師に確かめを求めに来たのが2名見られた。


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