研究紀要第51号 「学習指導の個別化 個に応ずる研究」 -040/080page
この時間の終わりに,形成的評価問題と同じ程度の3問について小テストを実施してみたが,この13名の生徒の結果は,全問正解者6名,形成的評価問題より1問でも多くできた者5名,変わりがない者2名であった。
この結果からみても,かなり効果的な働きかけであったと考える。働きかけの結果が思うように現れなかった2名については,事後指導などによって,さらに指導・援助していく必要があろう。
これらの授業の様子をもとに,事後研究会では多くの意見が出されたが,このような形で分枝型学習を取り入れるならば,個に応じた働きかけは十分可能であろうという結論を得ることができた。
ただ,わずかではあるが,15分の中で自己の選択したコースの問題が終われなかった生徒がいたこと,Cコースの生徒については,相互評価の場や手だてが必要であることが反省点としてあげられた。
[3] 生徒の学習内容の定着の度合いはどうか。
このことについて,事後テストや前提条件テストの結果から簡単にまとめてみたい。
事後テスト15間のうち,12問は到達基準に達しており,全体的にみてほぼ達成できたと考える(P24参照)。また,これを上位群,中位群,下位群分けてみても,係数が分数であるもの,解が分数になるものについては,下位群が落ちこんでいるが,その他の基本的な問題については,各群ともかなりよくできている(P25参照)。
一方,前提条件テストと事後テストの結果からみると,下位群の生徒の伸びがかなり見られる(P27参照)。このことは,定着していなかった前提となる学習内容が,つまずき解消のための補充問題の中で,確かなものとして身についていったことを示しているものと思われる。
以上のことから,分枝型学習を取り入れることによって,個の確かな学習が進められ,定着の度合いもかなり期待できるのではないかと思われる。特に,つまずき解消のための補充コースは,下位群の生徒にとって,基礎的な内容を定着させるためにも非常に効果的なものであったと考える。
解決策□3 「自己評価票をもとに,学習についての自己確かめや反省をさせ,その結果に基づき教師がコメントを記入することなどによって,個に応じた働きかけをする」について 学習したことについて,自己のつまずきや到達の度合いを確認したり,学習の取り組み方について反省をしたりすることは,本時の学習を一層確かなものにすると同時に,次時の学習成立のためにも非常に大切なことである。
また,生徒の自己評価の結果について,個の特性に応じた適切な教師の働きかけがなされることによって,教師と生徒の人間関係が深まり,生徒の学習意欲も喚起でき,一人一人の確かな学習の成立を更に可能にするものと考える。
以上のような観点から,自己評価票に関する解決策□3についてまとめてみたい。
生徒の自己評価票への記入の状況を見ると,初期の段階では,生徒にとってその使用の意図や自己評価の大切さが十分に理解できず,それぞれの項目について,単に“はい”,“いいえ”とだけ答えている生徒がほとんどであったが,学習が進むにつれ,つまずいた原因はどこにあったのか,そのためにどうしなければならないのかなど,具体的に記入できるようになってきた。これは,自已評価の大切さが少しずつではあるが生徒に意識されてきたこと,教師からのコメントによる働きかけが適切になされたことによるものと考える。この教師からの簡単なコメントは,生徒にとって学習の励みになり,またつまずき解消のポイントになるなど,学習意欲を喚起する上では,その効果は予想以上であったと考える。このことは,「先生からのはげましの言葉などに力づけられ,意欲がわいてきた」という多くの生徒の感想文の中にも見ることができる。ただ,このコメント記入による働きかけは,毎回実施することは容易でない。したがって,実際の記入については,無理なくできるものでなければならない。本研究では,1回の人数を10名程度にし,一人一人の生徒に対して