研究紀要第51号 「学習指導の個別化 個に応ずる研究」 -041/080page
3〜4時間に1度の割合で記入するようにした。このことは,すべての生徒に継続的な働きかけをすることを容易にし,効果的な方法であったと考える。
(2) 今後の課題
「個に応ずる働きかけ」を行い,「個の確かな学習の成立」を目指して実施された三つの解決策の有効性については,すでに述べた通りであるが,研究を進める中で反省すべき点もいくつかあげられてきた。それらの中から次の3点について述べ,今後の課題としたい。
[1] 資料の整理と改善について
個に応じた学習,個に応じた働きかけをしていくための学習資料,指導資料としては,「学習のめあて表」,「学習プリント」,「自己評価票」,「学習指導カード」の四つであった。その一つ一つの効果や有効性については認められているところであるが,それぞれの資料間の関連をはっきりさせることによって,修正,あるいは組み合わせが可能なものもあるのではないかという反省があった。
その中心になったものは,「学習のめあて表」と「自己評価票」の一体化である。本研究での自己評価票の主たるねらいは,一人一人の生徒に,学習についての自己確かめや反省をさせることにより,自己のつまずきや到達の度合いを確認させることと,自己評価票に教師がコメントを書き人れることによって,個に応じた働きかけをすることであった。しかし,評価の対象を更に焦点化し,学習のめあてと学習内容について客観的に評価できるものであれば,学習のめあて表とも一体化が図られ,生徒にとって,より役立つものになったのではないかという反省である。
このことは,学習のめあて表の一部を修正することによって,学習のめあて表と自己評価票を一つにまとめることをも可能にする。学習資料の精選という面からみても,考える必要があると思われる。
[2] 個に応ずる働きかけについて
学習の個別化は,生徒一人一人が個に応じた課題をもって学習に取り組み,教師の個に応ずる働きかけのもとに進められるものである。個に応ずる働きかけは,一斉指導の中でも当然行われるべきものであるが,一層徹底する必要があることから,本研究では,形成的評価問題の結果をもとにつまずきや到達の度合いに応じたコース別学習を進める中で,それを行うことにした。
その効果や有効性についてはすでに述べた通りであるが,毎時間すべての生徒に働きかけを行うことについては,時間的な面からも容易ではないし,できたとしてもそれは形だけのものに終わり,十分な効果は期待できないであろう。そのため,その時間での働きかけをする生徒を決めておくとか,人数をしぼって十分に時間をかけるなど,意図的・計画的なものでなければならない。また,分枝型学習をどの時間に取り入れるかといった問題とも関係するが,3〜4時間ごとに実施するとなれば,それだけまとまった長い時間が確保でき,その中で多くの生徒に,十分な時間をかけた働きかけも可能になろう。
これらのことについては,単元の構成や学習の内容とも大きなかかわりを持つものであるから,単元の指導計画を設定する場合においては,このような教師の働きかけの場を十分考慮に入れることも必要になろう。
[3] 授業の実際について
一人一人のつまずきや到達の度合いに応じた課題を設定し,分枝型学習によって個に応ずる働きかけを行ない,個の確かな学習の成立を目指して,「1次方程式の解き方」に焦点をあて,9時間の検証授業の中で実践されてきたわけであるが,次のような反省点があげられた。
○ このような分枝型学習は,生徒にとって初めてであったこと,そのための学習訓練が不十分であったことなどにより,必要以上に時間のかかることもあった。しかし,このような学習が継続され,学習のしかたが身についていけば解決できることであろう。
○ 分枝型学習に人ってからの学習時間がやや不足気味であった。毎時間の中にこれを取り入れ