研究紀要第51号 「学習指導の個別化 個に応ずる研究」 -061/080page
司会:授業者としてはどうでしょうか。
「T」と答えたその言動に,教師に一度目を通してもらっているので間違いないという自信を感じました。
N: D子ですが,Cコースの2番の問題でつまずいておりましたが,教師の2回の指導で解決することができたようです。
T: 私の観察したC男は,Cコースを(1)だけやって,Bコースにもどったわけですが,もう少し早目に「その前にBコースをやってごらん」という指示がほしかったような気がします。
O: 私は全体を観察していて,一斉授業の中でこれだけ個別指導ができたのは本当によかったと思います。特に,教師に指名されて発表した生徒が34名ということは,起立して発表しなかった生徒がたった4名ですから……。
ただ,この段階でのアンサーポールですが,これは,観察者が今どのコースをやっているのかがわかる程度の活用だったと思いました。
K: B子ですが,この生徒は,人に声をかけられると,指導されている内容がわからなくなってしまうようなんですね。そのような場合は,逆に生徒にわからないことを質問させた方がよいのかな,という感想をもちました。
橋本: 適切な指導ができたかどうかとても心配ですが,「自已評価票」のコメントで次時までに個別指導をしたいと考えています。
今日の授業でうれしかったのは,B子の隣りのK男ですが,本人から質問してくれたことです。今までに一度もなかったことでしたから。
S: そうなんです。K男は,先生に質問してからA男にも質問していました。A男も親切に教えていました。教師と生徒,そして生徒相互のラポートがうかがえて,よい場面だったと思います。
I: 一斉授業の中での分枝型学習ということで,解答の場面などで大部苦労もあったと思いますが,よく生徒一人一人への働きかけがなされたと思います。
O: 今の発言ですが.三つのコース別学習課題の解答の仕方は,一斉授業だけに,本当に難しいと思いました。普通は,課題をやってしまったらすぐに先生のところに行って指導を受けるのでしょうが……,教師は机間指導中ですから。
T: 実際はOHPによって解答を示したわけですが,生徒はそれぞれの課題に取り組んでいるさなかで,提示するタイミングが難しいわけですね。
H: そうです。AコースのT or Fテストなどは,OHPで瞬間的に示せばいいのですが,Bコース,CコースのQ and Aはかなり長い英文になるものもありますので,適切な解答の仕方とは言えないのではないでしょうか。
T: しかし,OHPで解答を示すにしても,発問や,それぞれの場における働きかけにしても,間の取り方というのでしょうか,タイミングなのでしょうか,難しいですね。その点,先生はとても上手だと感心しました。
M: とにかく,解答を示すという初期の目的は達成できたと思いました。
Y: B,Cコースの自由表現は,まさに言語活動の場であり,生き生きした活動だったと思いました。特に,教師の日本語による,発表内容についての要約は効果的だったと思います。
I: そう私も感じました。これは,机間指導における,主として上位群に対する働きかけがよかったためと思います。ただ残念なことは,もう少し多くの生徒に発表させてほしかったですね。 <考察>
一斉授業の中で,個に応じた働きかけをしてきたわけであるが,その場の思いつきや,判断だけでは適切な指導はできない。前述した「学習指導カード」と「徴候観察記録」,それに「自己評価票」などを活用したきめ細かな生徒への接触が,特に継続的な個別指導では大切なことがわかった。今まで,発表や質問をしたことのない生徒が,教師にも友だちにも自分のつまずきについて質問したという事実は,個に応じた働きかけの貴重な収穫と考えてよいのではなかろうか。