研究紀要第51号 「学習指導の個別化 個に応ずる研究」 -073/080page

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[3]  E男の場合 (下位生徒)

E男は,教研式中CRTの評価は2で,下位に位置し,Y−G性格検査の判定ではC(社会的適応消極型)であり,何事にもまじめに,こつこつと取り組む性格の生徒である。

英語学習に対するアンケートの結果をみると,「英語は,どちらかといえば嫌いだ」「予習,復習はあまりしない」「学習のめあては,わかっていないことが多い」「つまずいたり,わからないことがあっても,そのままにしておく」となっている。

英語の基礎学力の不足から,英語学習に対する関心も薄く,予習復習などはしない。つまずいたり,わからないことがあっても自分からすすんで解決しようとせずに放置し,下位に低迷している生徒である。

以上の諸事項をふまえて,指導の重点を次のようにした。

教科書の本文の音読をさせる。
比較的簡単な暗唱文の暗唱をさせ,少しでもできたら賞賛し,自信をつけさせる。
机間指導の際,T or Fテストでは,特に本文の内容と違っている点を確認させ,発表させることにより,わかって答える喜びを味わわせていく。
単語のつづりを正確に覚えさせていく。

次に,検証授業の観察を通して述べることにする。

音読の様子をみると,教科書本文の音読に興味が出てきた徴候がうかがわれ,声もしだいに大きくなってきている。指導の重点の一つである教科書本文の音読練習をすすめてきた効果のあらわれとみることができる。ただ,大きな声で読むようにはなってきているが,抑揚が不足気味で,棒読みの調子が抜けず,発音も全般的に語尾がはっきりしないことがあり,指導を要する点である。

検証授業を積み重ねるにつれて,E男の学習態度に変化がみられるようになってきた。授業が始まる前,「学習のめあて表」をみて,熱心に暗唱文の練習に取り組んでいた。「がんばってますね」と肩をたたき,ほめてやると,にっこりして熱心に練習を続けるようになった。このことから,個に対する働きかけが確実になされていることがわかる。E男も「にっこり」としたとあるが,先生に声をかけられ,認められたE男は,こころの中で「ようしがんばるぞ」という今までになかった学習意欲が燃えたったにちがいない。その後の記録には,「E男は,教師の質問に対しても,今までとはちがって,大きな声で自信をもって答えるようになってきた」と記載されている。また,その後の検証授業においては,教師の英語の質問に対し,大きな声で,自信をもって答えていたE男の姿が印象的であった。

分枝型学習形態によるコース別学習においては,Aコースの問題(T or Fテスト)は,TかFの区別がつくようになってきた。また,BコースもQ and Aは,あまり好まず,絵を見て重要文を書くことに興味を示してきている。E男自身,Bコースの絵を見て重要文を書くのがわかりやすいと話している。その時の自己評価票をみると,評価問題は,6問中2問が○,1問が◎,コース別学習課題は〔A→B〕で,自己評価は,2であり,反省としては,「質問に対する答えが今日はあまりわからなかった。Bコースの4,5番がわからなかったと記録している。先生よりの欄は朱書きで,「AコースからBコースヘとだんだんはやく進めるようになりましたね。Bコースの〔1〕の4は,Didで始まる過去の疑問文です。その問いの中にhow to〜(〜のし方)が入っていたのでわかりにくかったのかもしれません。5は,What〜?で『何を新世界で聞きましたか』という意味の質問です。少しずつWhatやWhereで始まる問いに慣れましょうね。がんばりましょう。」とある。

E男の場合,著しい変容ではないが,「英語はどちらかといえば好きだ」「予習は,だいたいする」「英語を書くのがこもしろい」(事後アンケートより)など,そのきざしが見えて来たようなので,単語のつづり,重要文の理解力などがついてくれば,もっと自信がつき,それに伴って,英語科の成績も向上してくるものと思われる。


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