研究紀要第51号 「学習指導の個別化 個に応ずる研究」 -075/080page

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5.研究のまとめと今後の課題

(1) 研究のまとめ

本研究は,生徒一人一人の特性や,単元及び毎時の目標とのかかわりにおける学力の実態を掌握し,認知事項の指導のあと,学習指導過程の中での評価を適切に行い,一斉授業における分枝型学習形態のもとで,難易度を踏まえた学習課題を通して学習の個別化を図り,個の確かな学習の成立をめざそうとしたものである。

学習の個別化を図り,「個の確かな学習の成立」をめざすための手法や各資料の効果については,事前・事後テスト,イメージテスト,アンケート感想文などを検証資料として,すでに「研究の結果と考察」で詳しく述べたとおりである。

ここでは,本研究をまとめるにあたって,その成果を,解決策とのかかわりから述べる。

解決策□1 「『学習のめあて表』により,毎時のめあてと,その学習に必要な予習的課題として,目標に迫るための既習事項を与えておく」について

英語指導では,小単元又は各セクション・パートに入る場合に,その内容がどのように教材としての価値を持っているかを,内容と言語材料の両面から明らかにしなければならない。いわゆる,指導目標を明確にすることである。もちろん,教科の特質上,一つの重要な文を導入する場合等においては,言語活動的手法を用いて,場面を設定しながら目標に迫らせることもあろう。しかし,指導事項の大部分は,事前に,次時に学習するめあてと,そのめあてに到達するための既習事項の定着の度合いを確認する必要のあるものである。

そこで,解決策□1に示した「学習のめあて表」を毎時間活用したわけである。

これまでのほとんどの生徒の予習の仕方は,機械的な単語の意味調べ,英文和訳,読みなどが中心であったのだが,授業に直結した予習的課題を提示したことにより,意欲的に,目的意識をもって授業に参加するようになった。特に,この予習的課題は生徒一人一人の個人差に応じられるように,難易度別に3段階に行動目標化して与えたので,各生徒が自分自身の到達度を把握し,次時にはどこから理解しなければならないかという,学習のめあてをある程度もてるようになった。

このことは,生徒側にすれば,予習や復習ばかりでなく,英語の学習の仕方そのものが身についていくことになり,教師側からすれば,個に応じやすくなると同時に,能率的な授業展開が図れるので,技能面の言語活動まで発展させることができるわけである。一方「学習指導カード」は,検証の数値には余り表れなかったが,学習の個別化を図るうえで,たいへん有効な資料であったと考える。

解決策□2 「生徒一人一人のつまずきの原因がある程度わかるような,本時のねらいに即した適切な形成的評価問題を補説問題とセットで行わせ,それぞれの到達度に応じたコース別学習課題を選択させ,その実施を通して,個別的な指導・援助をする」について

本研究の手法は,内容把握の段階での言語活動を主体としながら,One Sectionを2時間で行う。すなわち,1時限に認知面の活動をし,2時限で上記の技能面の活動をするわけである。

生徒一人一人に英語で表現する喜びを与えながら,内容把握の状況を,指導過程の中で評価したいと考え,2問ずつ3段階の難易度を考慮したQ and Aを実施した。それぞれの個人差を考慮し,つまずきの原因に対処するための補説問題とセットで行った。すなわち,英問に答えられなかったのは,教科書本文の内容がわからなかったためなのか,答え方がわからないためなのかを見ようとしたわけである。生徒はこの反応をアンサーポールで示した。

従来のQ and Aの際にはぼとんど答えられなかった下位群の生徒でも,研究の中期(第2回授業研究)には答えるようになってきた。このQ and Aと補説問題を形成的評価のための問題として活用して,各生徒がそれぞれの到達度を確認し,コース別学習課題へと進んだわけである。この場面


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