研究紀要第53号 「学習意欲を高める心理的治療への理論的アプローチ 第1年次」 -004/042page

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囲気,更に家庭内や地域での人間関係,生活の諸条件など,複雑な諸因子に規定されて存在しているものであり,操作的にその状態をつくり出したり,量的測定を期侍することに困難さがあるため学習意欲だけをとり出して,その実態をとらえる測定器具や用具の開発がなされていないのが現状であった。

しかし,学習意欲ということばをより明確な概念として確立することは,学習意欲をめぐる諸問題の解決にとって必要かつ有効であるという観点から,数回にわたる予備検査,本検査を実施し,要因分析を行い,最終的に学習意欲を構成する因子を,8つにまとめあげた,東京学芸大下山グループの開発による学習意欲検査をもとに,本研究の学習意欲の構造をおさえることとした。

この検査を作成するに当たって,下山グループでは,学習意欲を構成すると考えられる要因を30想定し,類似性の高い要因同志をまとめて17要因にしぼり,予備検査,本検査を実施し,その結果を因子分析して抽出された因子である。学習意欲を構成する因子を積極的側面にかかわるものとして5因子,学習意欲を阻害する側面として3因子計8因子でとらえているのである。

[1] 積極的側面としてとらえた困子


1) 自主的学習態度
・自主的に学習目標や学習計画をたて,自発的に学習しようとする態度
2) 達成志向の態度
・むずかしい問題に挑戦したり,できるまで頑張ったり,目標達成に努力する態度
3) 責任感
・やるべき学習を責任をもってやりとげようとする態度
4) 従順性
・学習を進める上で,あるいは,学力向上のために有効な他者からの援助や指示を受け入れる傾向
5) 自已評価
・自分の学力や成績などを自分なりに評価している。あるいは評価しようとしている

[2] 学習意欲を阻害する側面としてとらえた因子


6) 失敗回避傾向
・失敗を恐れるあまり,学習に集中できなかったり,学習場面から逃避しようとする消極的傾向
7) 反持続性
・勉強にあきやすかったり,遊びをやめて勉強にとりかかる決断がおそいこと。
8) 反(学習)価値観
・学習の価値を認織し,学習へと自已を方向づける態度に欠けている傾向

日常の授業(学習)場面から,本研究でとらえた学習意欲の定義と学習意欲の構造をまとめて図示すると図2のようになろう。

子供が学習にとりくむ場合,まず考えられるのは個々の子供の学習へのとりくみの態度である。しかもそのとりくみは,たしかな学習への目的意識をもっているかどうか,目的にコントロールされた学習へのとりくみの態度が,意志に支えられて学習を追求しようとする態度となって表われているかどうか,個々の子供が学習の過程でどのような心的傾向を示すかといった四つの側面からとらえる必要がある。

図2 学習意欲の構造(8因子)
図2 学習意欲の構造(8 因子)

学習意欲にかかわる検査,調査は,従来,学力向上要因診断検査(FAT)や能率的学習法診断検査(ESHI)等で検査領域の一つとしてはとりあげ


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