研究紀要第53号 「学習意欲を高める心理的治療への理論的アプローチ 第1年次」 -006/042page

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2 学習意欲が形成される背景とその問題点

学習意欲に影響する要因としては,本人自身の問題と本人に影響を与える外的要因としての環境,さらに,その環境と本人との関係が考えられる。

本人自身の問題としては,身体的要因,知能,性格,学習方法,学習態度,学習習慣がある。環境としては家庭,学校,さらに,それらをとりまく社会がある。また,本人と環境の間の問題としては人間関係,つまり,友達との関係,教師との関係がある。

そこで,これらの関係をあらわすと図4のようになる。以下に学習意欲と諸要因との関係を考えてみたい。

(1) 本人について

[1] 身体的な問題

身体的な問題はそれだけにとどまらず,精神的な面にも大きく影響を及ぼすので軽視することはできない。

近視,乱視,遠視などの視力障害があったり,聴力障害があると目の疲労や注意散慢になりやすく,次第に何事に対しても意欲がなくなってくる。鼻炎なども慢性化すると,頭が重くなり,常にぼやっとして落ち着かず,やる気がなくなってしまう。へんとう炎なども高熱を出しやすくなる原因で欠席につながる。身体的虚弱の場合は,根気強さに欠け,何事も長続きせずあきてしまうことの原因となる。また,身体的に欠陥があったり,他の子供と比べて,何か目立ったところなどがある場合は,そのことだけにとらわれたり,さらにそのことが身体的劣等感や,ひっこみ思案の性格,逆に攻撃的な性格形成へとつながり,学習意欲を阻害することになる。さらに身体的な問題が情緒面の障害につながる場合はことさら学習意欲が欠如することになると考えられる。

つまり,健康な生活習慣を身につけさせることと,身体的に障害のある子どもは早期に医学的な治療をうけさせると同時に精神面をささえる指導が必要と思われる。

図4学習意欲に影響する要因
 図4 学習意欲に影響する要因

[2] 知能・基礎学力

知能を全体的能力説(目的的に活動し,合理的に思考し,自分の環境を能率的に処理する総合的,全体的能力)の立場から考えてみると,知能の低い者が学習意欲に乏しいと決定づけることはできない。つまり,その子どもの努力,性格,レディネス,環境,興味等の諸要因によって左右される。

一般に,知能や基礎学力が低い場合は,学習内容が理解できなかったり,技能が習得できない場合があるため学習意欲が消失する場合が多いが,このような場合,まず学習内容の困難度を下げることが次の意欲の足がかりと考えられる。

また,知能や基礎学力が高い場合には,学習内容の平易さが学習意欲を阻害していることがある。従って,子どもの能力を十分に見きわめて,それぞれに応じた学習内容を与えることが必要であろう。

[3] 性格

学習意欲は心の問題であり,従って,性格が学習意欲にかかわる比重は大きいと考えられる。しかし,性格が学習意欲とかかわりがある諸要因とどのような関係があるか,また,他の要因に比べて,どの程度に影響しているかの客観的資料はまだ十分に得られていない。

ここに,大阪学芸大学(現大阪教育大学)心理学教室がYG性格検査と学業促進群,統制群,学業不振群の三群との関係を調査した資料表1を基に生徒シリーズ3(図書文化社)の一部を引用し


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