研究紀要第53号 「学習意欲を高める心理的治療への理論的アプローチ 第1年次」 -007/042page
ながら,性格と学習意欲の関係を考えてみたい。
表1 三群間有意差の認められた因子
(注)*は5%水準,**は1%水準
\ 因子
\ D C I N O Co Ag G R T A S 中学二年 国語
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数学 **
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社会
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理科 **
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英語
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小学六年 国語
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算数 *
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社会 *
* * * *
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理科
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中学二年
全教科
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小学六年
全教科*
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(図書文化社 生徒指導シリーズ3より転用)
各因子の意味
D 抑うつ性
C 回帰性傾向(気分の変化)
I 劣等感
N 神経質
O 客観性欠如
Co 協調性欠如
Ag 無愛想(攻撃的)
G 一般的活動性
R のんきさ
T 思考的外向
A 支配性
S 社会的外向中学2年の数学と社会についてみると,劣等感が強い,神経質である,客観的でない,協調性がない,のんきであるなどの因子で三群間に有意差がみられる。また,中学2年の多くの教科に共通して有意差のある因子としては,神経質,客観的でない,協調性がない,のんきであることなどである。
小学校では,劣等感,神経質,抑うつ性,客観的でない,協調性がない,のんきさなどの因子で有意差がみられる。
性格類型による調査によれば,中学校の学業不振群では,不安定積極型と平均普通型が多い。統制群では,安定積極型が多く,学業促進群では安定消極型と安定積極型が多い。小学校では各群に特徴はみられないが,学業不振群は安定型が少なく,統制群と学業促進群には不安定型が少ない傾向がみられると報告している。このようなことは年齢が進むにつれて性格が学業に及ぼす影響が大きいと考えられる。
以上の結果から,学業に対して関係ある性格特性の要因としては,情緒面の安定性,社会的適応性,内省的な面があげられる。
性格は学業だけでなく,人間関係に対しても重要な関連を持っている。つまり,環境にうまく適応して,自発的,自主的に日常生活を送ることができるかどうか,注意を集中し,根気強く物事に対処できるかどうかにかかわってくる。また,他人の意見を素直にうけ入れ,自分自身を省みることができるかどうかにも大きく影響するものと考えられる。また,性格が影響して,だらしない,無とんちゃくであるなど望ましくない生活習慣が形成されれば学習意欲の成立を阻害することになる。従って性格が学習意欲に及ばす影響は大きいと考えられるし,性格を望ましい方向へ変えるアプローチが学習意欲の向上につながるものと思われるがこれは今後の課題と言えよう。
ここで,性格を本人だけの問題としてとらえるのではなく,性格が形成されるのに大きくかかわってきている家庭をも十分考えてみなければならないと思う。
[4] 学習方法・態度・習慣
学習方法・態度・習慣が学習効果と密接な関係にあると言われている。学習方法が悪いため時間の割に効果があがらず次第に学習意欲がなくなってしまうこと,また,教科に好き嫌いがあったり,勉強時間が一定していないなど望ましくない学習態度や学習習慣がみられる場合は一般に学業不振になり,それが原因でさらに学習意欲が落ちるこ